移籍の経験から僕はなにを学んだのか。
シーズンはまだ終わっていないが、僕なりに気づいたことがたくさんあるので今回はそのうちのいくつかを紹介したいと思う。
誰とプレーすれば自分は輝きやすいのか
ニュージーランドにてサッカーをしていくうちに僕はNo,10のポジション、いわゆる攻撃的ミッドフィルダーとしてのプレーを得意としていった。4-3-3であればインサイドハーフになるし、4-2-3-1だとトップ下というポジションになると思う。このポジションからデフェンスと中盤の間にスペースを見つけ、そこでターンをしたり、起点となって攻撃を展開していくことを得意プレーとしている。得意プレーといえば聞こえがいいが、僕の脚が遅く、フィジカルが弱いという身体的都合上、生き残るにはなるべくボディコンタクトの少ないスペースでプレーをするしかなかったというのが正しい表現だと思う。
選手として分かりやすい特徴がなにもないので、一つだけ言わせてもらうと僕はゴールチャンスを作り出すことに長けている方だと思う。僕自身が点を取れるとかそういうことではなく、味方と協力してチャンスを作り出すことが得意だ。もう少し掘り下げて言語化していくと、僕はゴールをとるための状況を逆算したり、生まれるスペースを予測するのが得意なんだと思う。「あ、チャンスになりそう」と思ったら、体力を惜しまずにペナルティボックスに走り込みにいくし、実際は見えていないんだけど、「ここにいるはず」とラストパスを送りアシストをする。こんなプレーが好きだ。
そんな僕が今回の移籍で気づいたこと其の壱、「良いストライカーが必要」。
控えめに言って、今回僕が新しく移籍したチームにはストライカーがいなかった。当初の僕は「なんとかなるだろう」と思っていたが、この問題は僕にとって意外と大きなものであったと後に気付かされることになる。
まず、僕がスペースでボールを受け、前を向いても誰も裏に抜け出す人がいなかった。そうなってくると、僕は一人でごりごり行けるタイプではないので、サイドにボールを預けることになる。そうなるとゴールまでに必要なパス数は増えるし、道のりも遠くなる。僕自身も、ラストパスを通さないのであれば怖い選手にはなることが出来なかった。
自分のことはさておき、僕はフォワードに対する要求は人一倍高い。裏に走り込んで要求してほしいのも一つだが、裏のスペースに動き出しながら「足元に早いパスを要求できる」選手であって欲しい。裏に通すパスはスペースとコースが確保されていないと通すことが難しいのだが、足元に早いパスを送り、それを動きながらコントロールすることでトラップと同時にディフェンダーをかわすことができる。よく風間八宏さんが本で説明されているやつだ。これができる選手がいなかったことで、ゴールに直結できるようなプレーを量産することが出来なかった。
また、クロスをあげるときなどに、「いてほしい場所」にいてくれるストライカーもいなかった。お互いに一秒先を予測して「そこだよね」と言わんばかりに、呼吸の合うようなプレーがなかったことも少し寂しかった。
其の弐は、「パサーも必要」だということだ。
これはクロスを上げる選手にも含んでいる。冒頭に述べたように僕は足が全くと言っていいほど早くない。だが、スペースを見つけるのは得意な方だと思う。持ち手をよく見て、タイミングよくディフェンスラインの裏に抜け出すプレーは下手ではないと自負している。実際にニュージーランドでは足が遅いにも関わらず、裏に抜け出すシーンを多く作ってきた。ただ、あれは僕の動き出しが良いのではなく、パサーが良かったということに気付かされた。
今回のオーストラリアでは、動き出している側の気持ちとしては「もらえる」のだが、ボール保持者と目が合わず、実際にボールが届くことが少なかったように思う。仮に気づいたとしても、ボールが長すぎてキーパーに取られてしまうシーンが多かった。僕の足が遅いことが理由かもしれないが。
クロスにおいても、僕は大半、クロスのボールを触るだけで得点をすることが多い。触るだけというと聞こえが悪いかもしれないが、「そこにいる」ことが個人的には重要だと考えている。ペナルティボックス内でもスペースを見つけ、点で合わせる。こうして点を取るためにはそこにボールを供給できるクロッサーが必要となる。
結果的に、今回のチームはお世辞にもクロス精度が高い選手はいなかったので、得点できる量が減ってしまった。
最後に其の参、「上手い選手と一緒にプレーしたい」。
これはただ上手い選手ではなく、自分より上手い選手であることが大切だ。そんな自分より上手い選手から見て学ぶことが自分は得意でもあるし、楽しんでいたということが分かった。ニュージーランドで僕が所属していたチームにはめちゃくちゃ上手い選手がいて(走れないけど)、その選手のターンの仕方やボールの持ち方をよく参考にしていた。キックが上手い選手がいたら、どんなイメージで蹴っているのかよく聞いていたし、見て盗むということが好きだった。振り返ってみれば、中学や高校生の頃も、コーチのプレーをよく真似ていたように思う。自分にとってうまいと思える選手がいれば、日々のトレーニングもモチベーション高く取り組みやすいことに気がつけた。きっと大人となって、これから上手くなっていくにはコーチの指示をよく聞くことだけでなく、見て盗むことが重要になってくると思う。
これは自己分析のほんの一部。
以上が、今回の移籍で気がついたことの3つだ。もっと大切なことがあるのだが、それはまた今度書こうと思う。
今回は、自分に必要な要素を外的要因から考えてみた。サッカー選手として、今回考えたような要因は「人任せ」と思われるかもしれない。しかし、選手である以上、移籍したチームで結果を残すために「自分を知っておくこと」は大切なことだと思う。自分にはどんなプレイヤーが必要か、どんなサッカーをしているチームが合いそうか。もちろん理想としては、どんなチームでも、結果を出せる選手であることに越したことはない。しかし、自分にはそんな力はないことを理解している。故に、外的要因と自分の相性を知っておくことも、選手としての勝率を高めるための一つの戦略となり得るだろう。そう信じてる。
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