2022年、印象的だった本について。

2022年は僕の人生の中でも少し特殊な一年間を送っていて、3ヶ国で4ヶ月生活するという初めての生活を経験しました。環境がガラリと変わるとそれにつられて思考も変化してくるということを身を持って体感していて、それと同時に思い悩むことも増えたようにも思います。

僕はそんな一年間を今後の人生のためにも有意義なものにすべくしっかりと振り返っておきたいと考えています。

そして今年もありがたいことにたくさんの本を読むことができました。
オーストラリアではサッカーで生活出来ていたから比較的時間があったし、日本での4ヶ月間は無職ニート生活であったので、本に捧げる時間はその分たくさんありました。読む場所や、その時々の心情によって突き刺さってくるモノが変わってくるのが本の魅力的な部分でもあります。

そこで今の僕の現在地を記しておくためにも、2022年という今年一年を、今年読んだ本によって振り返っていくことにしました。したがって、「誰かにおすすめしたい」、そのような本ではなく、今年読んだたくさんの本の中から僕の印象に残った本を紹介していきたいと思います。

目次

2022年、印象的だった本について

正欲(朝井リョウ)

2022年の3月、ついに僕はコロナウイルスに感染しました。その頃ニュージーランドで生活をしていた僕は、一週間の隔離生活を余儀なくされました。そんな時に、有り余る時間を一日注いで、庭の広いデッキで、天気の良いに読み切った一冊が朝井リョウさんの正欲です。
朝井リョウさんの小説は就職活動の時期に読んだ「何者」以来であり、読み終わったときには「何者」を読んで何かにハッとさせられたあの頃の感覚をそのまま思い出しました。
マジョリティとか、マイノリティであるとか、普段はあまり気にせずに生活をしているのですが朝井リョウさんの小説を読むと、いつも違った角度から自分の人生を見つめられるような、そんな気がしてとても好きです。

DANCE OR DIE(Ahmad Joudeh)

シリアの難民育ちのバレエダンサーであるAhmad Joudehさんの自伝です。
戦争や難民生活からバレエダンサーとして夢を見る気持ちに反して、難民出身ということでビザを取得することが出来ないという厳しい現実。ニュージーランドでビザ申請の厳しさを体験しましたが、僕なんかとは比にならないほど厳しい状況で戦わざるを得ない人がいるということを思い知らされました。
僕は海外で生きていくにあたって日本人であることの恩恵をたくさん受けてきましたし、たまたま日本に生まれ育ったことはとてもありがたいことなんだと感じています。しかし世の中には”そうでない”人がいることを知っておくと、尽きることのない欲に歯止めをかけられそうな気がしています。
日本で、日本人としてでは経験することのなかった人生を知ることが出来ました。

闘争競争論(河内一馬(ズマさん))

大学時代に選手と指導者という関係でお世話になり、彼がアルゼンチンに渡る前からnoteを購読していました。そんな僕からすると特に目新しいことはあまりなかったのが本音ですが、海外でサッカーを経験している僕にとってはあいも変わらずに突き刺さる内容が多いです。
自分が何気なく普段使っているその「言葉」、そこに込められた背景や意味に一度立ち止まってしっかりと向き合ってみる。そうして歪んだ部分を自分の理想の形へとデザインしていく。そんなことをサッカーに当てはめて考えているような人に感じています。
ぜひ。

雑文集(村上春樹)

ハルキストとしてもちろん村上春樹さんの小説は大好きなのですが、彼のエッセイはまた違ったテイストで好きです。村上春樹さんがどんな人なのか知らずして小説を読んでいましたが、小説家としての村上春樹や、普段の生活が少し垣間見えてくるとより一層ファンになってしまいます。
何も深く考えずに寝る前に少しだけ読んで、とくに何も感じずに寝る。そんな読み方でこのエッセイを読んでいました。

肉食の哲学(ドミニク・レステル)

ニュージーランドに渡ってから気がつけばベジタリアンになっていた僕ですが、オーストラリアに移ってからは一層菜食主義にのめり込んでいきました。菜食主義としての意義を追求していくと、環境や健康、倫理に直面してきて、そこにアスリートとしてのカラダづくりを考慮すると何が正解か分からなくなってしまう時期がありました。思考を深めていくと結局は哲学に辿り着き、そんなときにGOODタイミングで見つけた本がこの本でした。
ベジタリアンであろうがなかろうが、菜食主義を通して食に対して視野が広がることは間違いない一冊だと思います。

夜と霧(ヴィクトール・E・フランクル)

今更読んだのか。そう思われそうですが、恥ずかしながら今年にやっと読むことが出来ました。アウシュヴィッツに囚われるも奇跡的に生還した著者が、極限状態における心理状態や行動について記した一冊です。死を目の前にした時に人は何を思うのか。
そういった意味では数年前に読んだ「極夜行」という本と似ていて、未知の世界を知れるとても面白い本でした。

恥辱(J・M・クッツェー)

大学で教授をしていた男性が性の欲によってある問題を引き起こし、文字通り人生が暗転していきます。田舎の農場での生活へと環境を変え、そこから審判を受けながら更生していくかのような物語に思えますが、そうでもないところがこの小説の面白いところです。
また、南アフリカが舞台であり、日本では馴染みが薄いレイプや中絶、黒人差別といった社会問題を考えさせられる内容にもなっています。
日本に帰国して発見したお気に入りの古本屋で出会ったお気に入りの一冊です。

忘れる読書(落合陽一)

個人的に落合陽一さんはマジですごい人(語彙力)だと思っていて、この人の考えていることや発言には時々注目しておかないとなと思っています。落合陽一さんの本はどれも難しいのですが、サイエンスとアートを絶妙に織り交ぜた視点を持っていてとても面白いです。今回はそんな落合陽一さんの専門とは少し違い、「読書」について書かれた本を読みました。
頭の良い人の本の読み方は参考になることが多く、とてもおもしろかったです。

i(西加奈子)

僕の記憶が正しければ以前は電子書籍に小説を出していなかった西加奈子さん。海外で読みたくても読めなかった思い出がとても強いです。
帰国してからの楽しみで待望の一冊目は「i」。
個人的にこの本は今年一番に突き刺さりました。ニュージーランドに渡る前、僕はフィリピンに一ヶ月滞在したのですが僕はそこで人生の価値観がガラリと変わりました。旅に出て発展途上国や貧困を目の当たりにすると価値観が変わる、よく言われる話でもあると思いますが、僕にとってそれはフィリピンでの一ヶ月間でした。それからの僕は「幸せなところで生まれ育った人間」として自分にラベルを貼り、同時に「もし違う場所で生まれていたら、、、」と自分の無力さを測ってしまうような癖が出来てしまいました。そんなぼくと似たような想いを抱えて生きてきたアイの物語によって僕は「じぶんだけじゃないよなそりゃ」かなり救われた気持ちになれました。
「裕福コンプレックス」を一度でも感じたことがある人はぜひ手にとってみるべき一冊だと思います。

サラバ!(西加奈子)

またしても西加奈子さんの小説ですが、この本を挙げないわけにはいかないし、僕の中で西加奈子さんは間違いなくブームなので記しておきます。
iに引き続き、震災やテロといった現実に起きた出来事と、イランで生まれエジプトでの生活を経験するという著者の人生と同じ境遇で書かれた主人公「歩」。30歳を超えて、彼の人生はすべてが悪い方向に進んでしまいます。そんな時に助けてくれたのが「巻き貝の姉」でした。物語が面白いことはもちろん、歩の抱く感情は自分にも当てはまるところがいくつもありました。また読んでいた時期が、日本で無職ニート生活をしていた時期で、正直に言うと無力感がすごいし、自分は何をやっているんだろうと責めながら日々を送っていた時期でもありました。そんな時に読んだこの一冊によって俺の人生はまだまだこれからだと、そう思わせてくれました。
「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない」。巻き貝の姉が放ったこの言葉は、歩以上に僕に突き刺さりました。

技と術

サッカーをしていると「技術」という言葉と常に向かい合うことになります。技術とはなんだろうか、そんなことを再考している時に出会ったこの本には、様々なスペシャリストの方にとっての「技術」に対する考え方が詰まっていました。26歳、プロでもないサッカー選手ですが、まだまだ「技術」を突き詰めていきたいと思います。

ダイアローグ(ヴァージル・アブロー)

クリエイティブとはなにか。この一言で十分な気がしますこの本は。

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この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

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