1年で3カ国でプレーして感じたサッカーの「違い」について。

先週で2023ニュージーランド・ナショナルリーグが終了し、今シーズンの活動が終わりました。結果は10チーム中5位。最後の試合に勝てていれば3位でフィニッシュ出来ていただけに悔しい結果となりました。ただ、周りのチームがお金で選手を集められるなか、全員が無給でプレーしているボランティアクラブとしてはまずまずの成績を残すことが出来たのではないかと思います。

2023年は僕にとって東奔西走の一年間でした。1月には念願であったスペインにサッカー挑戦し約二ヶ月弱プレーするも契約を獲得できず。その後一ヶ月ほどヨーロッパを旅して日本へ帰国。3月から7月まではニュージランドへのビザを取得するために、約5ヶ月弱の日本滞在を余儀なくされました。いつビザが申請できるのか、いつビザが発行されるのか。常にストレスと向き合いながらもヨーロッパ旅行で使い果たした貯金を回復させるために色々な仕事に勤しみました。そしてようやく7月の中旬にニュージランドに戻ることが出来ました。

しかし、それからというものの滞在先はどこになるかわからないし、ビザの関係で仕事は出来ないし、常にストレスと二人三脚で生き抜いています。

とにかく一ヶ月先の予定も立てられないような、奇想天外の人生に身を委ねながら生きている。そんな状況です。

そんな2023年シーズンでしたが、僕は3カ国でサッカーをプレーしてきました。
スペインで2ヶ月、日本で4ヶ月、そしてニュージーランドで4ヶ月です。

公式戦に出場できたのはニュージーランドだけでしたが、それでもそれぞれの国でプレーして、それぞれの国で違いを感じてきました。

僕にとってその「違い」こそがサッカーの面白さであり、醍醐味であると思っています。

そこで今回は僕が3カ国それぞれでプレーして感じた違いについて、オンザピッチの観点から書いていきたいと思います。

目次

スペイン

スペインでは5部リーグに所属するチームに練習参加していました(契約できませんでしたが)。そしてその後にはセカンドチームに当たる6部リーグに所属するチームでプレーをしました。正直、5部と6部とではかなりのレベル差があると感じました。
それぞれ3週間ずつしかプレーしていない身でスペインサッカーについて語るのはとてもおこがましいですが、それでもたくさんのことを僕は吸収できたと感じています。

そこには僕が長年憧れていたスペインサッカーを形成する「何か」がたしかにありました。

ティキ・タカ

大好きだったスペインの街並み。

スペインと言えばティキ・タカです。バルサの試合を見て育ってきた僕にはティキ・タカへの憧れがあります。
もちろんチームの特色にもよりますが、僕が参加したチームはボール保持を大切にするチームでしたので、そこにはティキ・タカが存在していました。トレーニングではロンドを必ずやるし、とても大切に楽しみながら取り組んでいる印象がありました。

1つ目の驚きとしては下手な人がいないということです。日本やニュージーランドではパス回しが苦手な選手が必ずチームにいましたが、スペインではディフェンスの選手でも苦手意識は全く見受けられませんでした。すなわち、全員で共有しているイメージがとても高かったのです。

個人的に衝撃を受けたのは、ダイレクトパスの質でした。日本やニュージーランドでプレーしてきた僕の感覚では、強いパスに対してトラップをするか近くの選手に落としてあげるのがセオリーでした。要は強く早いパスはミスをする可能性が高まるので、一度ボールのスピードを落とそうとします。

しかし、スペインでは強いパスを受けた選手がそのままの勢いでもう一度強いパスをインサイドキックで繋げていました。二度の早いパスを通されたディフェンスは狙い所を失っていることが多かったです。

強く速いパスをそのままダイレクトでパスできる技術はもちろんのことながら、その選択肢を準備できている判断スピードの速さに僕は驚きました。

切り替えのスピードとインテンシティ

写真撮ってあとから勉強。

スペインといえばティキ・タカと言いましたが、僕がスペインでプレーして体感した一番の驚きはインテンシティの高さです。

まずはボールを失った瞬間の功➔守への切り替えがめちゃくちゃ早いです。
特にボール保持者に対して後ろからチェイスバックする気迫と激しさは凄まじかったです。おそらく、後ろ向きで守備をしていることが良くないという原則を叩き込まれているのだと思いました。

そしてボールを奪いにいく激しさ。日本ではボール保持者に対して飛び込まずに間合いをゆっくり詰めることを教わりますが、スペインでは違いました。全員が飛び込んで足を狩るような勢いでボールを奪いに来ます。抜かれようものならユニホームを引っ張り、ファールしてでも止めるのが当たり前でした。

イメージするのであれば、遠藤航選手のようなボール奪取の姿勢がスタンダードに見えました。

意外にもスペインで僕が受けた一番の衝撃はパス回しの部分ではなくて、守備の強度についてでした。

この守備の強度なくしては、スペインサッカーの骨頂であるティキ・タカは生まれなかったと僕は確信しました。

大人と同じサッカーをする育成年代

地獄だった二人部屋。

グラナダのU17と練習試合をする機会があり僕もプレーをしました。
17歳以下とは言っても上手い選手は既に上のカテゴリーでプレーしているので、実際には15歳の選手が多かったみたいです。ですが、体は華奢である彼らが大人の僕らと対等に試合をしていたのです。

何より、ビルドアップ時のポジショニングやボールの動かし方が洗礼されていて、とても15歳の選手と対戦しているようには思えなかったです。

日本で高校サッカーの試合と、Jリーグの試合が同じように見えることはありません。日本では小学生は小学生の、中学生は中学生の、高校生は高校生のサッカーをすることを教わります。そして大人になったら大人のサッカーを学びます。

しかし、スペインでは育成年代から大人のサッカーまで、一つの共通するサッカー像があるように思えました。

ここらへんがスペインでは毎年のように16,17歳でトップチームデビューを果たす選手が輩出される理由なのかもしれません。

小柄な選手のアウトサイドターンとインサイドパス

追放された最後の夜。

イニエスタ選手のアウトサイドターン(インサイドも)は芸術です。実際、あのターンが出来るようになればボールを失う回数はかなり減ることに大人になってから気が付きました。スペインでは、アウトサイドターンをとてもきれいに使いこなす選手が多かったです。

日本の小学年代で教えられるようなトリッキーな技を使う選手は殆どおらず、基礎的な技術を高い水準で発揮できる選手が多かった印象です。

またスペインには身長も小さく体の線も細い選手が多いです。しかし彼らは日本やニュージーランドのどんな大きな選手よりも、強くて早いインサイドパスをコンパクトに蹴っていました。

インサイドキックは体の使い方と体幹なんだろうなと実感させられました。

また細かい話をすると、日本人に多いインサイドで面を作り押し出すようなインサイドキックではなくて、股関節から最後にヒザ下を素早く振るような流動的なキックモーションの人がほとんどでした。

日本

今回の日本滞在では、レベルの高い環境ではなくソーシャルな社会人サッカーに参加しました。レベルや強度はもちろん下がりますが、外国人リーグなど色々な選手とプレーする機会があり、普段とは違った環境のサッカーをみれて面白かったです。

一方でコンディションも作らないといけなかったので、母校の大学に練習参加させてもらいました。こちらも都リーグという決してレベルの高い環境ではありませんが、一生懸命に活動していてとても良かったです。

それでも上手い選手が多い

区リーグで経験したブロッコリーグラウンド。

ソーシャルサッカーに参加すると、既にサッカーの一線からは引退をした選手が多くいます。しかしそんな彼らは今でも上手い選手が多かったです。今はもう動けませんが彼らは高校や大学では有名選手だったりしてその技術は引退した今でも健在でした。

日本のサッカー競技人口の多さを垣間見た瞬間でした。

また僕の主観ですが、ソーシャルなサッカーをやらせたら日本はかなり強い気がしています。ヨーロッパの選手などは引退をすると一気に運動能力が低下して、ボールコントロールなどがぎこちなく見えるのですが、日本人は器用に動きます。

個サルなどに行くと社会人の方でも上手い人が多くて驚きました。

試合の全体像を捉えられている選手が少ない

初の新国立。

語弊を恐れずに言うなら、サッカーIQの低い選手が多いというのが日本の印象です。それは技術やフィジカルがとても優れているのにも関わらず、試合で発揮することが出来ないという選手を思い浮かべてもらえると分かりやすいと思います。

日本にはドリブルで2人3人抜くことに楽しさを覚えていたり、局面を打開することのみに楽しさを感じている選手が多いと感じています。
サッカーというゲームに勝つという全体像を捉え、その中でプレーをしている選手があまりいないというのが個人的な印象です。

具体的に言えば、ポジショニングが悪かったり、シンプルなプレーを苦手としていたり、守備のセオリーを理解していない選手が多いと感じました。

逆に、そういった視点を持っている選手はアマチュアやソーシャルのようなサッカーでも明らかに違いが見受けられました。
なぜ日本には判断の悪い選手が多いのか。その理由はわかりません。

真面目

新宿。

大学での練習は相変わらず大真面目の真剣な練習でした。練習中に笑いなどは許されません。それが悪いとは思わないし、僕も個人的にはそちらが肌に合います。もう海外の練習雰囲気にも慣れましたが。

ただ海外では全く違った雰囲気で練習が行われているということを知っておくのもいいことだとおもいます。
ジョークや笑いが練習中に飛び交い、それでもスイッチが瞬間的に入る。これもまた一つの正解であることを日本のサッカー界(特に育成年代)は知っておくべきだと感じています。

流れが悪いときにそれを断ち切れない。僕は日本の高校や大学でプレーをしてきて幾度となく経験してきました。

一方で海外の選手やチームの切り替えの早さは以上です。ミスを引きずらないし、負けたあとの雰囲気も悪くないです。違った方法で悪い流れを断ち切るのも意外と悪くないのではと、個人的には感じています。

ロングボールが蹴れない

四万温泉。

大学の練習に参加しても、ソーシャルサッカーでも同じ印象を受けました。日本人はロングボールを蹴れる選手が少ないということです。ロングボールの使い方をあまり知らないという解釈も出来るかと思います。

具体的に言うとセンターバックやサイドバックから対角の選手に対するロングボールです。ニュージーランド、オーストラリア、スペインという僕がプレーした海外の国では当たり前のように対角にボールを蹴れる選手が揃っていました。

そして、そのロングボールを前提にポジショニングが決まるので、対角の選手は絞らずに張って、中盤にも程よいスペースが確保できます。

しかし日本ではそのロングボールが選択肢にない選手やチームが多く、ピッチの半分でプレーをしている場面が多く見られました。

理由はわかりませんが、きっと筋力の問題ってことにしておこうと思います。

変わらない練習メニュー

別府温泉。

日本で久しぶりにプレーしてて一番興味深かったのが、僕が育成年代に経験してきた練習メニューが今でも変わらずに存在していたことです。

一番代表的なのは基礎練です。
べつに基礎練習が悪いということではないです。そして昔から存在する練習メニューを変えないといけないというわけでもないと思います。

ただニュージーランドやスペインでは、プロチームが取り組んでいるような練習メニューをすぐに取り入れていることが多かったです。日本ではそれがあまり見られませんでした。
練習の質自体はとても低いニュージーランドですが、アカデミーの練習などを見学すると練習メニューはよく考えられていて、「いい練習メニューだな」と思わされることが多かったです。

僕はこの理由は「言語」にあると考えています。
SNSが発達した現代で英語を使いこなせると、取得できる情報量が桁違いに増えます。ニュージーランドからは地球の反対側に位置するヨーロッパサッカーの情報も当たり前のように英語でキャッチできます。

一方で日本人には情報取得で言語という壁をひとつ乗り越えないといけません。最先端のサッカーで何が起きているのか、日本語に変換されて流れ込んでくるのには時間がかかります。

これが日本人は個人の経験から指導法を生み出しやすく、海外の人は他から情報を仕入れやすい傾向を生んでいるのではないかと考えています。

ここらへんの言語とサッカーに関してはまたいつか詳しく書きたいと思います。

ニュージーランド

リーグの中盤でチームに合流した僕は、地域リーグを数試合プレーしてすぐにナショナル・リーグを迎えました。計16試合をプレーしてほぼフル出場。一年ぶりの公式戦で試合感覚やプレー感覚はあまり冴えませんでしたが、怪我なく終えられたことはポジティブに捉えています。走行距離も毎試合13kmほど記録し、わるくなかったと感じています。来シーズンはこのコンディションを基盤に、プレーや判断の質を高めていければと思います。

ニュージーランドのサッカーを語る上で欠かせないのはU20ルールだと思います。公式戦でU20の選手を積極起用させるべく毎年さまざまな施策が定められます。今年は毎試合チーム全体の出場時間の10%以上を20歳以下の選手に与えなくてはならないというルールがありました。個人的にこのU20ルールができて以来、ニュージーランドのトップリーグのレベルは降下の一途を辿っていると感じています。

全体的に似たようなサッカーをするチームが多い

グラスルート。

ニュージーランドのチームはどこも似たようなサッカーをする印象があります。
日本やスペインのようなドリブルやロングボールにこだわる特徴的なチームはなく、大体のチームがボールを自陣から繋ぎ、守備時は前線からプレッシャーをかけます。そこの質の違いや選手のクオリティによって勝敗が決するイメージです。

まだまだ競技人口の少ないニュージーランドでは、様々なサッカーが生まれてくる確率も高くないと個人的には考えています。

勝つための最適解を追い求めがちな現代サッカーですが、個人的にはもっといろんな特色を持ったチームが出てきても面白いんじゃないかと思います。

能力の高い選手は意外と多いが…

最初はゲストハウス生活(元監獄)。

アマチュアリーグのニュージーランドですが、高い能力をもった選手は意外と多いように思います。
特に海外からの外国人選手は上手い選手が多いです。

しかし、その一方で戦術的に洗練されているかというとそうではありません。あまりチームとして戦術は与えず個人で解決させるというのがスタイルなのかもしれません。ここらへんは、国としての教育なども関わってくると思うので詳しいことはわかりません。

ただ、とにかく戦術面でこの国のサッカーのレベルはあまり高くないことは明らかです。逆を言えば、戦術がしっかりしているチームはかなり手強いです。

最後に対戦したチームは戦術が洗練されていて、結局のところ活路を見出すことが出来ずにボロ負けしてしまいました。

困ったときにもなるべく選手で解決するニュージーランド。
困ったときにはコーチに指示を出してもらう日本とは対照的なスタイルだと感じています。

切り替え(ゲームスピード)が遅い

グラウンド横の羊たち。

スペインや日本のサッカーと比較すると、切り替えの早さにかなり差があります。めちゃくちゃ遅いです。
すなわちゲーム展開としては、間延びしてきてスペースが増え、カウンターの攻め合いのような試合が多いです。

中盤でプレーする身としては、ポケットでボールを受けたときのプレッシャーがまるで違います。スペインや日本では背後からのプレッシャーにも気をつけなければなりませんが、ニュージーランドではその心配がありません。かなり余裕を持ってボールを持つことが出来ます。

原因としてはフィットネスが低いからだと思います。アマチュアリーグであることが問題ではなく、プロリーグがないということが選手のモチベーションの低下に繋がります。したがって、上を目指す場所がないのでフィットネスも平均して低いです。太っている選手もかなり多いです。

野心の低さ

美しきホームグラウンド(期間限定)。

個人的に危惧しているのは若手選手の野心の低さです。
プロリーグがないこの国では、サッカーで稼いで暮らしていくという選択肢がゼロに近いです。「プロサッカー選手になりたい」という子供の総数もかなり少ないと思います。

それに加えてU20ルールによって、努力しなくても出場機会が回ってきます。試合に出るために頑張ろうという気持ちも減っているのかもしれません。

うまくなりたくて仕方ない。サッカーで上に行きたくて仕方ない。そういった野心を持っている選手が極めて少ないのがニュージーランドです。これはオーストラリアと比較してもかなり少ないと思います。

個人的には危惧するとともにとても寂しい気持ちになります。

球際の強さ

最後のトレーニングはユニホームで。

球際と言っていいのかわかりませんが、五分五分のボールに対する衝突の勢いは半端ではありません。さすがラグビー大国というばかりのタックルがきます。

日本人は気をつけたほうが良いと思います。
モロに喰らうと死にますので。

「あの国のサッカー」とは。

僕は小さい頃から海外を経験してきた選手の話を聞くのが好きでした。
ブラジルのサッカーはこうだとか、スペインのサッカーはああだとか、アフリカのサッカーはやばいとか。

そうした話を聞く度に、「なんで国によってサッカーが異なるのだろうか」という興味を抱いてきました。
それと同時に実際に自分で体感してみたいという欲求を抱き続けてきました。

そんな自分が今こうして数カ国でプレーをして、それぞれの国で違いを感じたことを、少しだけ誇りに思います。

本当はアフリカやブラジルやアルゼンチンという、もっといろんな国のサッカーを体感してみたかった気持ちもあります。しかし、海外を転々としてプレーすることは楽しさ以上に過酷さが付き纏うことも忘れてはなりません。
いまの僕にはそれに耐えうる体力がありませんし、なにより念願であったスペインを経験したときに、自分の中でモヤモヤしてた雲が晴れた感覚があったのです。

ということで、今のところこれ以上新たな国でプレーするつもりはありません。

しかし、「国とサッカー」、国としてのアイデンティティがサッカーに表現されるということが今でもとても面白いと感じています。

それがなぜなのかは浅学の僕にはまだわかりませんが、考え続けていきたいと思います。
次はそれぞれの国で感じた文化的なサッカーの違いをオフザピッチの観点から書いていきたいと思います。

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この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

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