なぜヴィーガンアスリートが増えているのか?−動物性タンパク質の危険性について−

アスリートにとっての動物性タンパク質の危険性とは

近年、ヴィーガンやベジタリアンと言った菜食主義になるアスリートが増えてきています。ネットフリックスのドキュメンタリー映画「The Game Changer」などでも取り上げられているように、食事を菜食に変えることでパフォーマンスの向上を体感しているアスリートも多くいます。
The Game Changerについて僕が注意すべき点をまとめた記事はこちら

はたして、それはなぜなのでしょうか。

僕が菜食主義について調べていく上である一つの仮説が誕生しました。

「動物食品が体に悪いのではないか」

つまり、菜食主義になることでパフォーマンスの向上が実感できるのは、動物食品の摂取を止めたことによるものではないかということです。

そこで今回は、「動物性タンパク質がアスリートにとって悪影響を及ぼしている原因」について可能性や根拠を交えながら調べていきたいと思います。

※今回はアスリートのパフォーマンスの向上という観点から見ていくので、気候変動と言った環境問題の観点から菜食主義になるという動機は含めずにいきます。

目次

なぜヴィーガンになるアスリートが増えてきているのか?

なぜアスリートが菜食主義に切り替えようとするのでしょうか。

僕が思うにその答えは3つです。

1,怪我予防・怪我の回復

2,パフォーマンスの向上

3,健康のため

その理由を考えていくには「動物性タンパク質が体に及ぼしている影響」について知る必要があります。

動物性タンパク質は体にとって悪?

菜食主義になるということは動物食品の摂取を止めるということ。
ではいったい、動物性タンパク質は体にとってどんな悪い影響を及ぼしているのでしょうか。

炎症を誘発してしまう

怪我予防・怪我の回復について考えるうえで鍵は「炎症」です。

炎症は身体の治癒反応の基礎であり、傷や感染の部位に栄養や免疫系の活動をもたします。多くの場合、炎症は有益であり、治癒には不可欠です。
しかし問題となるのは、炎症がその目的を果たさず、慢性化したり、回復が遅れたりする場合です。

つまりここで考えるのは悪い炎症についてです。

米国ボブスレー連盟医師スコット・ストール
「動物性タンパク質は複数の炎症分子を含んでいるから炎症を起こす可能性がある。
動物食品の摂取は消化中に腸内フローラを変質させる。その結果炎症を促進する細菌種がはびこり炎症ミディエータTMAOを生産する。炎症は動脈の血流を悪化させ筋肉や関節の痛みを増加させる。」

(The Game Changer)

オメガ6系脂肪酸は炎症を促進するホルモンを合成するため注意が必要です。

グリセミック指数の高い食品を摂取すると血糖値が急激に上昇します。これにより、体内の糖とタンパク質の間で糖化反応と呼ばれる異常な反応が起こり、進行性糖化最終生成物と呼ばれる炎症を誘発する化合物が生成されます。これらの化合物は、DNAを傷つけ、細胞膜を破壊し、老化を促進します。動物性食品(肉、乳製品、卵)は、特に穀物を多く含む不自然な食事を与えられた動物から作られたものは、炎症を起こす脂肪、特に飽和脂肪が多く含まれているため、炎症を起こしやすいと考えられます。

(Plant Based Athlete)

これらのことから動物食品は(悪い)炎症を誘発しやすく、その結果リカバリーの回復が遅くなったり、関節や筋肉に痛みが慢性化しやすくなることが考えられます。

血流を悪くする

パフォーマンスの向上と一言で言いましたがアスリートなら誰しもが望む「体が動く」「体が軽い」という感覚。
これには血流が関わってきます。

ロバート・ボーゲル医師心臓血管の専門家は3人のアメリカンフットボーラーを対象に実験をしました。

食事と血管内皮機能には相関関係がある。内皮は薄い細胞の膜で血流を調節している。筋肉や臓器の必要な血流量に応じて拡張する。しかし、細胞が弱まると血管が拡張できず、十分な血液が流れなくなる。したがってパフォーマンスが落ちる。動物性タンパク質と脂肪の影響は大きくて食後6~7時間血液に影響を及ぼす。

(The Game Changer)

実験では食事後の血漿について植物性ブリトーと動物性ブリトーを比較しています。透明な血漿ならば内皮機能がうまく働いていることを示すのですが、動物性ブリトーを食べたあとは血漿が濁っていることが確認されていました。

つまり動物性食品を摂取すると

血液が濁る→内皮機能が上手く機能していない→十分な血液が流れなくなる→パフォーマンス低下

に繋がるということです。

心臓病・心疾患の可能性を高める

動物性タンパク質の摂取は、肥満、糖尿病、高血圧、臓器障害など、アメリカ人の死因の多くに関係することがわかっています。

実際、アメリカ人の死因の第1位は心臓病であり、肉、牛乳、卵などの動物性タンパク質を多く含む食事と、動物性食品にしか含まれない大量のコレステロールや飽和脂肪が直接関係していると言われています。


コレステロールと動物性脂肪は、動脈にプラークを形成し、重要な臓器への血流を制限します。この血流低下が、勃起不全、心臓病、心筋梗塞、脳卒中などの原因となります。また、適切な血行と血流は、最適な持久力、体力、回復力を得るために必要なので、アスリートにとっても不利になることは想像に難くありません。

(Plant Based Athlete)


動物性タンパク質を食べると冠状動脈にプラークを形成する。これは動脈の機能を制限するだけでなく血流を塞いでしまう。体を維持するために当然心臓に負担がかかる。

(The Game Changer)


炎症分子であるヘム鉄は回復を損ねるだけでなく心臓病を引き起こす可能性があるとも言われています。

毎日1ミリグラムのヘム鉄摂取で27%冠動脈心疾患のリスクが高まると報告。

(The Game Changer)

動物性タンパク質の食事をする人は75%早死にする可能性が高まる、がんや糖尿病出の死亡率4-5倍高くなる。

(The Game Changer)

多くの研究や世界保健機関(WHO)の調査により、肉類(特に牛、豚、羊)、特に加工肉(ホットドッグやランチミートなど)が、特定のがん(特に大腸がん、膵臓がん、前立腺がん)の発生に関係していることがわかっています。

(Plant Based Athlete)

水銀という有害物質

体に良さそうなイメージのある魚。オメガ3系脂肪酸など健康上のメリットも多く報告されています。

ですが魚介特有の問題がもたらすリスクの方が、メリットをはるかに上回るという意見が主流です。
特に水銀は中枢神経・内分泌器・腎臓などの器官に障害をもたらし、口腔・歯茎・歯にも損傷を与えるといわれます。

魚に含まれる水銀は、脳、心臓、腎臓、肺、免疫系に悪影響を及ぼす可能性があります。
小型の魚やサケ、タラ、エビ、マスなどの魚介類は、タイラギ、メカジキ、サバ、マグロなどの悪名高い魚介類に比べて水銀含有量が少ないにもかかわらず、その含有量は十分に高く、多くの医療専門家が魚介類の摂取を控えるように勧告しています。

(Plant Based Athlete)

水銀はとても有害。水銀だけでなく毒性重金属、PCB、ヘキサクロロベンゼン、プラスチック化合物、難燃性化合物、思い浮かぶ産業汚染物はたいてい魚に含まれている。

(Seaspiracy)

また、湖や海で劣化したプラスチック製品の残骸であるマイクロプラスチックも問題です。
摂取されたマイクロプラスチック粒子は、臓器を損傷するだけでなく、有害な化学物質(特にホルモンを破壊するビスフェノールA(BPA))を溶出し、免疫機能や生殖機能を低下させる可能性がある。

(Plant Based Athlete)

植物性食品はどうなのか

動物性食品が体にとって有害である可能性が分かりました。そこでいったい植物性食品はどうなのでしょうか。

動物性食品の代わりに植物性食品を摂るメリットがあるのか見ていきたいと思います。

植物性食品は抗酸化作用がある

抗酸化作用とは体の酸化を抑えてくれる作用で、つまり炎症を起こしにくくしてくれます。

怪我予防・怪我の回復を考えるうえでは「炎症を起こす食品を減らし、抗酸化作用のある食品を強調する食事」が大切になってきます。

植物性食品はたんぱく源であり、ミネラル、ビタミンも豊富で抗酸化作用もある。
炎症を抑え腸内環境を整え、また血液供給、身体能力をも高めてくれる。

(The Game Changer)

野菜や果物の植物性食品は抗酸化物質の宝庫。その含有量は平均値で動物性食品の64倍。
菜食に切り替えるだけで3週間で炎症の数値が29%も減少します。

(The Game Changer)

果物や野菜を着色する天然色素には、強力な抗炎症作用があります。全粒穀物や割れた穀物は、血糖値の上昇が緩やかなため、炎症を起こしにくい。

(Plant Based Athlete)

全粒粉を使用した植物性食品は、オメガ6系とオメガ3系脂肪酸の比率が高い傾向にあります。植物性食品を中心とした食生活では、酸化ストレスやフリーラジカルの発生を抑える、強力な抗炎症作用のある抗酸化物質を含む食品が多くなります。

(Plant Based Athlete)

植物性食品は病気になりにくい食べ物

どうやら植物性タンパク質は、たとえ大量に摂取しても、動物性タンパク質のように健康に悪影響を及ぼすことはないようです。

植物性タンパク質、特に豆類や全粒穀物は、動物性タンパク質には含まれない天然のビタミン、ミネラル、抗酸化物質、植物性栄養素、水分、そして最も重要な食物繊維も含まれています。

(Plant Based Athlete)

また、動物性食品のカロリーは1ポンドあたり1,000〜2,000キロカロリーですが、植物性食品のカロリーは1ポンドあたり200〜600キロカロリーなので、目標摂取カロリー内であれば、植物性食品を多く摂取することができます。

(Plant Based Athlete)

つまり、病気にならないだけでなく、病気になりにくい食材であることが分かります。

植物性タンパク質も動物性タンパク質と同等の増強効果がある

「菜食主義は男らしさを失う」

こんなことが囁かれていたのには、テストステロンというホルモンが関係します。テストステロンは男性ホルモンの代表であり、筋肉や骨格といった男らしさをつくるホルモンになります。

大豆にはエストロゲンというテストステロンを減少させるホルモンが含まれており、それがコルチゾールにも影響し筋肉量を減少させ体脂肪を増加させると言われていました。

しかし、それは乳製品に含まれるエストロゲンでの話でした。

大豆に含まれているのは植物性のエストロゲンであり、通常のエストロゲンとは反対の働きをします。植物性もエストロゲンは乳製品に含まれるエストロゲンの過剰な生成を防いでいます。

(The Game Changer)

つまり植物性のエストロゲンはテストステロンの減少には影響せず、筋肉にも問題ないということになります。

2015年にJournal of the International Society of Sports Nutrition誌に掲載された二重盲検試験によると、12週間のレジスタンストレーニング中にエンドウ豆のプロテインを摂取した参加者は、ホエイプロテインを摂取したグループと同等の筋肉量を獲得しました(プラセボを摂取したグループよりも多くの筋肉量を獲得しました)。

(Plant Based Athlete)

このように必要摂取量のタンパク質を摂取していれば、それが動物由来であるか植物由来であるかは筋肉には関係ないことが分かっています。

まとめ

以上が、動物性食品が体にとって悪と言われている理由と、アスリートが菜食切り替える理由になります。最後にまとめると、

動物性食品には(悪い)炎症を起こす炎症分子が含まれている
→植物性食品には炎症を起きにくくする抗酸化作用が豊富に含まれている
→怪我予防・怪我の回復が早まる

動物性タンパク質に含まれる脂肪が血液の流れを悪くしている
→植物性タンパク質は血漿を濁さない
→パフォーマンスの向上

動物性タンパク質は動脈の機能を制限するだけでなく、血流を塞いでしまう
→当然その分心臓に負担がかかり、心臓病や心疾患の原因に
→植物性タンパク質には栄養が豊富に含まれている為、病気になりにくい
→健康でいられる

魚には環境汚染による水銀やマイクロプラスチックが含まれている
→人体に有害
→魚を摂取するメリットよりデメリットの方が大きい
→摂取しないことで健康でいられる

もちろん体に合う、合わないもあると思いますがこれだけの根拠をみるとトライしてみる価値があるように思えます。

ではまた。

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この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

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