NZのAfter Match から考えるサッカーの文化【その①】

この国、ニュージーランドのサッカーには試合後にAfter Match(以後アフターマッチ)という文化があります。試合終了後、シャワーを浴びてすぐに近くのパブに集まり相手チームとの親交を深めます。
僕の経験では日本では大学の時にあった親睦の深い大学との定期戦のみ。恐らく、世界中を見渡しても試合後に相手チームと集まる場があるのは珍しいことだと思います。

今回はそのアフターマッチについて紹介すると共に、いくつかのことについて考えを述べていきたいと思います。
その第一弾として、外国人である僕がこのアフターマッチをどう思うのかについて話していきたいと思います。

アフターマッチとは

実際のAfter Match の様子

冒頭でも述べたように試合後にパブなどに集まり、相手チームやサポーターなどと親睦を深める機会になっています。

食事もホームチームから用意されていることがほとんどですが、栄養面の配慮は特にありません。必ずと言っていいほどフライドポテトは用意され、他はパスタやピザなど試合後にはあまり向いていない重たい油系の食べ物が並びます。
そして99%の選手は試合後すぐにここでビールを飲みます。僕がこの国でサッカーをプレーしてはじめて驚いたのはこれだったかもしれません。

参加者は自由です。基本的に両チームの選手やスタッフは必須で、サポーターも参加します。
その他には選手の恋人や家族、友達などもよく参加します。
たまに「あいつ誰だ」とみんながいう人もいるので、この場に入るメンタルさえあれば誰でも参加自由です。

このアフターマッチの主な内容は、両チームの監督からの試合の振り返りスピーチがあります。ここでマンオブザマッチも毎試合選出されます。
ただマンオブザマッチに選ばれたからと言ってなにか記録に残るわけではありません。もらえるのは、ドリンクの無料券だけです。


他には、選手やコーチの記念すべき出来事があった時にはこの場で皆でお祝いします。例えば「○○試合出場達成」などです。

このスピーチの時間以外は自由で好きな人と会話や親交を深めることができます。
ですが、選手は基本的にそのチームでかたまって話していることが多いです。相手チームやサポーターと話す人も数人いますが、基本的には同じチームで集まっているのが実態です。

このアフターマッチはローカルだからこそできるように思いますが、これはナショナルリーグでも行われます。

ナショナルリーグでのアフターマッチとなると、その地域のサッカー事情や選手の事など、普段とは違う情報を話せるので違った楽しさもあります。

外国人である僕はアフターマッチをどう思うのか

アフターマッチは基本的にチーム関係者との会話の場です。チームへの在籍が長い選手ほどこの場を楽しんでいるように見えます。

そんなアフターマッチを外から来た者の僕はどう思うのか。

正直、最初の一年はほぼ苦痛でした。
集まっている人たちは誰も知らないし、なにを話しているのかも分かりませんでした(英語力不足)。試合後にすぐにアルコールを口にするのにも抵抗があったのですが、そこは周りに合わせて一緒に飲んだりもしていました。


ほんとうに何も楽しくなかったのですが、家まで送ってくれるチームメイトがこういうイベントが大好きなので、最後の最後まで一緒に残り時間を送っていました。ほんと苦痛でした。

ですが、今考えるとあの時期に無理やりにでも参加していたのは、とてもプラスだったように思います。

その理由は、サポーターとの関わり
チームにはサポーターズクラブというのがあり、毎試合どこにでも駆けつけてくれる人たちがいます。ほとんどが年配の方たちで、老後の楽しみで見に来ているのでしょうが、この人たちのおかげでチームがあるのも事実です。ボランティア中心のクラブなので、この人たちが多くのことをサポートしてくれています。

そんな人たちと関わりを持てたのはこの場のおかげでした。この場に不本意ながらも最後の最後まで参加したおかげで、サポーターの方たちと親睦を深めることができました。ただでさえ英語を聞き取ることができなかった当時の僕にとって、年配の方の英語を聞くことは至難の業でした。というかむしろほぼ理解出来ていませんでした。

ですが、そこで名前を覚えてもらえたことが大きかったです。

ニュージーランドのサッカーはあくまでアマチュアスポーツ。ましてや去年まで地域リーグ専用であったこのチームは、正直リーグで優勝しようがなにも得るものはありませんでした。
そんなチームを応援している人たちが見たいのは「だれ」がプレーしているかということ。自分とはなんら関係ない人ばかり出場し活躍しても、ここのサポーターの人たちにとってはなんの嬉しさもないことを知りました。このチームに歴の長い選手はサポーターと仲が良いし、サポーターの大切さもとても理解している。そういう選手だからこそ、サポーターはその選手が見たいし、チームを応援したくなる。
そんな綺麗事のようなことを肌で学んだのが、このアフターマッチの場でした。

今となってはアフターマッチもそんなに嫌いではありません。社交的な性格ではないため好きとは言えませんが。。

今では監督がなにを言っているか理解できるから、相手チームの監督が試合をどう見ていたのか知ることも出来ます。チームメイトの彼女や家族たちとも仲良くなり、点を取ったり活躍したら喜んでくれる人も増えました。試合後に、周りの雰囲気に合わせてビールを飲むということもしなくなりました。
サポーターの人たちとも毎回なにかしら言葉を交わすようになり、今まで知らなかったチームの歴史など知ることもできました。
正直、彼らの言っていることは今でも聞き取るのが難しいのですがそれでも話し続けてることで、今ではあまり活躍してない試合でさえ褒めてくれます。

とにかく総括して今はアフターマッチを楽しんでいます。そして、外国人である僕やチームに新しく加入してくる選手にとって、チームを知るためのとても貴重な機会であると考えています。

僕は知らない環境に足を踏み込み、サッカーをしたことで、少しだけ ”サッカー”というものを理解することができました。

僕はなんのためにサッカーをしているのか
僕はどんな時にサッカーをしていて喜び感じるのか
どんな人がサッカーを楽しみ
どんな人たちによってチームやサッカーが存在しているのか
サポーターという存在の大きさ

そんな大切なことを知ることができた一つのきっかけであるアフターマッチという文化に僕はとても感謝しているし、この文化はとても興味深いことだと思います。
なので今後もう少しこのアフターマッチについて話していきたいと思います。

なんども言いますが、ニュージーランドのサッカーはプロサッカーではありません。
僕らアマチュアの選手は試合に勝ったところでお金がもらえるわけではありません。
だからといって、プレーをする価値がないわけではないのです。
それでもプレーを続けるのには、それ以上の喜びや価値があるからです。
この国のサッカー選手はサッカーのほかに仕事をしていますが、それでも喜ばせたい人がいるからプレーをしているんだと思います。

「僕にとってサッカーは何なのか」
まだまだ探求は続きますが、日本にいた頃よりも、確実に前を進んでいるのは間違いないです。

「応援される選手とはどんな人なのか」
そんなことを考えながらサッカーと、そしてアフターマッチとも向き合っていきたいと思います。

ではまた。

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この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

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