「ヴィーガンになったらリカバリーが早くなった」
これはアスリートが菜食主義に切り替え、体に起きた変化としてよく言われるひとつです。
Recovery was one of the biggest differences I noticed by evolving to a plant-based diet. My body feels stronger and faster after tough workouts. (植物性の食生活にしたことで、最も大きな変化を感じたのは回復力です。タフなワークアウトの後、体がより強く、より速く感じられるようになりました。)
—Rebecca Soni, six-time Olympic medal–winning swimmer and world record holder
THE Plant-Based Athlete より
なんとなく健康に見えるヴィーガンの食事ですが、いったい何がアスリートのリカバリーを早める要因になっているのでしょうか。
そこで今回はヴィーガンがリカバリーを早める理由について調べていきたいと思います。
僕はアスリートとしてベジタリアンになって14ヶ月目になります(2022.10月現在)。
そして僕もベジタリアンになってからリカバリーが早くなったと実感しています。試合後には筋肉痛で動けなかった体が、翌日にはほとんど回復している状態に変化しました。
そんなベジタリアン生活ですが、「一体何が疲労回復を早める役割を果たしているのか。」
自分で試して体感しているからこそ書ける記事を調べたことをもとに書いていきたいと思います。
※僕は専門家ではないので、あくまで勉強したことを見解として述べさせてもらっています。
菜食主義がリカバリーを早くする
近年、ヴィーガンやベジタリアンといった菜食主義に切り替えるアスリートが増えてきました。理由は様々ですが、菜食主義に切り替えて感じられる変化として「疲労回復」が挙げられます。
“Red meat causes a lot of [inflammation] and when I was cutting that down, the tendinitis started to go,” 「赤身の肉は多くの炎症を引き起こすので、それを減らしていたら、腱鞘炎が治まり始めたんだ」
https://www.livekindly.co/manchester-united-chris-smalling-vegan/
ークリス・スモーリング(サッカー選手)ー
ヴィーガン食に徐々に移行することで、様々な距離のレースでより安定したパフォーマンスを発揮することができるようになりました。多くの人がウルトラランニングは体にダメージを与えると考える中、Jurekはビーガン食のおかげで回復が良くなったと述べています。
https://sportcoaching.co.nz/scott-jurek-diet/#:~:text=Even%20though%20many%20people%20think,following%20a%20vegan%20nutrition%20plan.
ースコット・ジュレク(ウルトラランナー)ー
I am able to bounce back from strenuous workouts in record time. Not to say I don’t feel the fatigue; I just notice I am able to give the same percentage effort day in and day out.
Plnat Based Athletes
激しい運動をしても、記録的な速さで立ち直ることができるのです。疲労を感じないというわけではなく、毎日同じように頑張れるのです。
—David Verburg, Olympic gold medal–winning sprinter
Recovery was one of the biggest differences I noticed by evolving to a plant-based diet. My body feels stronger and faster after tough workouts.
Plnat Based Athletes
植物性の食事に進化したことで、私が気づいた大きな違いのひとつが回復力です。厳しい運動をした後でも、体がより強く、より速くなったように感じます。
—Rebecca Soni, six-time Olympic medal–winning swimmer and world record holder
このように多競技にわたる多くの選手が口を揃えてリカバリーが早くなったことを体感し、パフォーマンスの向上を実感しているようです。
僕もアスリートとして試合後の疲労回復に頭を悩ませていたので、「リカバリーが早くなる」というメリットに注目してベジタリアンに興味をもち始めました。
では、なぜ菜食主義がリカバリーを早めるのでしょうか。
ヴィーガンがリカバリーを早くする理由
ヴィーガンが疲労回復を早める理由は2つ考えられます。
1,動物肉が炎症を引き起こしやすい
2,野菜に抗炎症物質が多く含まれている
1,動物肉が炎症を引き起こしやすい
まず動物肉が炎症を引き起こしやすい理由について。
米国ボブスレー連盟医師スコット・ストール「動物性タンパク質は複数の炎症分子を含んでいるから炎症を起こす可能性がある。
動物食品の摂取は消化中に腸内フローラを変質させる。その結果炎症を促進する細菌種がはびこり炎症ミディエータTMAOを生産する。炎症は動脈の血流を悪化させ筋肉や関節の痛みを増加させる。」
(The Game Changer)
詳しくはこちらの記事で解説をしていますが、動物性タンパク質には炎症物質が含まれており炎症を過剰に引き起こしてしまう可能性が挙げられています。
必要以上に炎症を起こすことは、疲労回復を阻害する行為となります。
動物性タンパク質に含まれる炎症誘発物質によって必要以上に炎症が発生し、疲労回復が遅れてしまうというメカニズムです。
2,野菜に抗炎症物質が多く含まれている
次に野菜に抗炎症物質が含まれていることについて。
抗炎症物質とは、炎症の発生を抑制する物質です。
抗炎症機能が働くと、炎症が軽減され疲労回復も早くなります。
そんな抗炎症物質は野菜に多く含まれていることが分かっています。
ベジタリアンやヴィーガンになると野菜の摂取量が増えるので、必然的に抗炎症物質の摂取量も増加します。
それによって炎症が軽減され疲労回復が早まるというメカニズムです。
僕自身、ベジタリアンアスリートとして活動して約八ヶ月が経った頃に疲労回復が劇的に早くなったことを体感しています。その時になにを変えたかというと「抗炎症物質に対する意識」です。
野菜の摂取量を増やし、トレーニングや試合後に抗炎症ドリンクを摂取するようになってからリカバリーが早くなったと感じています。
ですので、菜食主義になることで抗炎症物質の摂取量が増加してリカバリーが早くなるということには納得感が強いです。
次にリカバリーを早めるメカニズムについてもう少し詳しく見ていきたいと思います。
リカバリーを早める「4つ」のメカニズム
血流を改善する一酸化窒素
“ビーツなどの植物性食品に含まれる一酸化窒素を含む食品を豊富に摂取することで、血流が改善され、回復が早まります”
https://www.runnersworld.com/news/a25797700/plant-based-diet-recovery/
一酸化窒素が含まれる食品を多く摂取すると、血流が改善され回復が早まるとのことです。
菜食主義になると植物性の食品を摂取することが自然と多くなります。
植物性の食品には一酸化窒素を含むものが多く、したがって一酸化窒素の摂取量も多くなります。
トレーニングなどによって筋肉などが傷んだ体は、傷んだ部位に血流を送り込むことで炎症を起こし回復へと向かっていきます。
一酸化窒素によってこの時の血流量が増えることで、素早く修復をしリカバリーを早めることに繋がっているのでしょう。
血流を速める硝酸塩
「ロガーソンは、多様なヴィーガン食には硝酸塩を含むこれらは炎症を抑え、回復を助けると説明しています。」
https://www.healthline.com/health-news/pro-athletes-are-going-vegan-will-it-help-2#:~:text=Nieman’s%20research%20has%20found%20bananas,protein%20since%20it’s%20less%20inflammatory.
硝酸塩も一酸化窒素と同じように血流の速度を高め回復を早めます。
メカニズムとしてはこうです。
硝酸塩には血管拡張、血管を広げる作用があるため血流の速度を高めます。血流が速くなると体中に酸素をたくさん運べるようになるので修復が早まることに繋がります。
そしてその硝酸塩がヴィーガン食には豊富に含まれているためリカバリーが早くなるというわけです。
免疫力を高める抗酸化物質
「植物に含まれる抗酸化物質(キャベツを紫色に、ニンジンをオレンジ色にしている化合物)が体内の炎症を抑える」
こちらも植物を摂取することで増える抗酸化物質が体内の炎症を抑える働きがあり、回復を早めることに繋がっています。
抗酸化物質の働きとしては活性酸素と関わってきます。
激しい有酸素運動をしている人は酸素を体の中に取り込む量がとても多くなります。そうすると活性酸素が増え、免疫細胞にダメージを与えます。
その結果、働けなくなる白血球が増え、免疫が弱まるという流れがあります。
抗酸化物質は活性酸素が体内で暴れるのを防ぐので、炎症を抑えることに繋がり、リカバリーを早くなります。
エネルギーの源、炭水化物
「炭水化物の摂取量が増えれば、より長い時間、より多くのエネルギーを得ることができます。」
ヴィーガンになるとパスタやパンだけでなくキヌアやレンズ豆といった炭水化物を豊富に含む食品が増えてきます。
ここからは僕の見解なのですが、炭水化物を豊富に摂取するとグリコーゲンというエネルギーが貯蔵されます。ところがどこかで見たことがあるのですが、グリコーゲンが不足すると人間の体はタンパク質を分解してエネルギーとして利用するみたいです。つまりそうなると筋肉が分解されてしまいますので良くありません。山本義徳先生も筋トレ前には炭水化物を摂取することが重要だと言っていました。
筋肉が分解されるということはそれだけ余分なエネルギーを修復に費やすことになります。
炭水化物を豊富に摂取しておくと、筋肉の分解を防ぎ、血液をリカバリーに注げるため回復が早まることに繋がると思います。
リカバリーを早めるための食べ物
一酸化窒素
一酸化窒素の原料となるのはL-アルギニンです。したがってL-アルギニンを含む食品を摂取することが大切になってきます。
・ナッツ
ナッツには多くのアミノ酸を含み、 L-アルギニン もそのうちのひとつです。
硝酸塩
・ほうれん草
・春菊
抗酸化物質
抗酸化作用のある栄養素は主にビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどになってきます。
ビタミンC
・パプリカ
・キウイ
ビタミンE
・ごま
・アーモンド
・ピーナッツ
ポリフェノール
・ブルーベリー
・りんご
・赤ワイン
菜食主義のアスリートも増えてきている
こちらの記事でヴィーガンやベジタリアンの食生活に切り替えたアスリートを特集しました。
また、プラントベースのアスリートについて書かれた本「Plant Based Athletes」には多種目にわたる多くの選手がヴィーガンやベジタリアンに挑戦しながら、パフォーマンスを向上させている声が書かれています。
そして彼らが口を揃えて話す変化が「リカバリーが早くなった」でした。
リカバリーが早くなったことによって、トレーニング量の増加に繋がったり、怪我の減少に繋がっているみたいです。
僕個人的には、グルテンフリーで知られるジョコビッチ選手が2019年あたりからヴィーガンに切り替えたことが印象的でした。ワクチンについても世間を騒がせたジョコビッチ選手ですが、彼は自分の体や健康へのこだわりが人5倍ほど強く、知識もすごいです。
そんな彼が自分で調べた結果ヴィーガンに切り替えたということは、ヴィーガンにはアスリートにとっても大きな魅力があるからだと思いました。
まとめ
ヴィーガンになることでリカバリーが早くなると言われる理由には、以下の2つがあります。
動物肉が炎症を誘発する
野菜に抗炎症物質が多く含まれている
そしてリカバリーのためには栄養素と炎症が深く関わってきます。
そこでポイントとなる要素が以下の4つとなると考えています。
一酸化窒素
硝酸塩
抗酸化物質
炭水化物
僕の認識では、いずれも菜食主義になることで、肉食時に比べ自然に摂取量が増えることが理由だと思います。
そして食とリカバリーの関係を考えるうえで大切なのが、「炎症」「血流」に着目することだと個人的に思いました。
ここら辺に関してはとても複雑なので引き続き勉強が必要そうです。
では、リカバリーを早めるためにいったい何を食べればいいのか?
いくつかの食品を紹介させていただきましたが、僕が思うに結局いろんな食品をバランスよく摂取していくことが大切だと思いました。それぞれの栄養素が互いに影響しあって効果を発揮するモノも多く、リカバリーだけに着目してこれらの食品だけを摂取するのは得策ではないように思います。アスリートとしてタンパク質の量にも気を付けて摂取していかなくてはならないので、やはりバランスが大切かと思います。
ベジタリアンアスリートとして活動している僕ですが、「アスリートにとってベジタリアンやヴィーガンが絶対良い!」とは思いませんし、人それぞれ合うか合わないかだと思っています。
しかし、僕はベジタリアンになったことで疲労回復が劇的に早くなったし、パフォーマンスも向上していると感じています。
ですので、強制は絶対にしませんが、アスリートとして菜食主義は試す価値があるものだと考えています。
コメント