『考察』ニュージーランドのサッカーについて【リーグ構成とレベル】

前回、ニュージーランドのサッカーリーグ構成とレベルについて書きました。

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今回は前回紹介したニュージーランドのリーグ構成が変わった事について考察していきたいと思います。特に大きく変わったことは以下の二つです。

・外国人選手枠4人
・20歳以下の選手をスターティングメンバーに2人起用しなくてはならない

この新しく追加されたルールについて、
「外国人選手として」「21歳以上の選手として」レギュラー争いをしている僕がどう思っているのか書いていきたいと思います。

そして少し視野を広げて、今後ニュージーランドサッカーがどのような発展をしていくのか個人的に展望を考察していきたいと思います。

目次

個人的な視点

大きな変更点をざっくり振り返ると

・一年通して一つのチームで戦う
・オフシーズンが全員に確保
・地域リーグを勝ち残ったチームのみがナショナルリーグでプレーできる

・外国人選手枠4人
・20歳以下の選手をスターティングメンバーに2人起用しなくてはならない

個人的には上から三つはそこまで気にしていません。
というのも、僕が住んでいるクライストチャーチは南島リーグに含まれるのですが、南島リーグは一番レベルの低いリーグになります。
その中でもほぼ毎シーズン南島のチャンピオンになっていたチームに所属しているので、ある意味ナショナルリーグまでの道は他のどのチームよりも近い状態です。
もちろん絶対ということはないのですが、それでもチームメイト含めぼくも、ナショナルリーグをプレーすることが当たり前という認識になっています。
これは、一年単位で次はどこに行こうかなど考えている僕にとってはプランが立てやすくプラスの方向に働いていると思います。
仮にオークランド周辺の地域に住んでいたらかなり競争率の高いリーグを争うことになるので、ナショナルリーグでプレーすることが出来ず、9月でシーズン終了。ということにもなりかねません。

一つのチームで戦うということに関してもメリットが大きいように思います。
昨年今所属しているチームで冬リーグを戦い、夏リーグは選抜されたチームでプレーしました。しかし中身の選手はほとんど変わらないのですが、監督や環境が変わったことによりチーム力とか戦術理解度はかなり低い位置からスタートしたような感覚でした。とくに監督が3-5-2という馴染みのないシステムにこだわっていたりしたので、そういうことを考えると一つのチームで1シーズンを戦えるということは選手にとっても監督にとってもプラスだと思います。

メリット

・チームやリーグによってはナショナルリーグでプレー出来る可能性が高くなる
・オフシーズンが得れる
・戦術理解度が深めやすい

デメリット

・ナショナルリーグへの確率が高い一方、地域リーグでの競争力は小さくなる
・or その逆パターン
・シーズンが早く終わってしまう可能性がある

下の二つに関しては僕にとっては息がしづらくなる変更です。
僕のチームには外国人選手が7人いて全ての選手が主力の選手です。外国人枠がなければほとんどの選手がスタメンに選ばれるレベルです。その中で4枠を争うというのは簡単なことではありません。

それにプラスして20歳以下の選手を2人起用するルール。
正直に言うとやはり20歳以下の選手はレベルがまだ少し低い現状があります。個人的にはスポーツの世界で生きているならば年齢は関係ないし、若い選手は足りない実力を必死で埋めようとするからこそ成長すると考えています。なのに、二枠もスタメンが確保されているのは少し甘すぎるんじゃないかと外国人21歳以上の僕は思っています。

全体的な視点

ナショナルリーグのレベルは高くなるのか

僕の予想では昨年までに比べて全体としては少しレベルが落ちるのでないかと考えています。でも上がるような気もしているし正直微妙なところです。

レベルが上がると思う要素は、

・通年通してプレーしてきたチームである事
・地域リーグを勝ち抜いてきた実力が担保されていること

やはりサッカーにおいてチームの成熟度、戦術理解度はかなり重要です。ここがリーグ始まる一か月前に集められたチームより半年以上プレーしてきたチームの方が成熟しているのは明らかです。代表チームとクラブがイメージしやすいと思います。


一方、レベルが下がるであろうと思う要素は

・20歳以下の選手起用の義務
・外国人枠5→4
・地域リーグを勝ち抜けなかったチームにもいい選手がたくさんいる


とくに三つめは大きいような気がしています。
僕らがニュージーランドの天皇杯Chatham Cupのベスト16で戦ったチームはナショナルリーグに参加していたチームで、その中にはナショナルリーグの中でもトップレベルの選手が数名います。(1人はその試合を最後にオーストラリアのプロリーグ、Aリーグにいきました)
しかし彼らは所属する地域リーグでは現在ナショナルリーグ出場権圏外に位置しています。彼らがナショナルリーグでプレーしないということになると、リーグ全体のレベルもやはり少し下がるのではないかと思っています。

自国の有望な選手は育ってくるのか


今回のリーグ構成の変更の目的は「自国(ニュージーランド)の選手を育てたい」というのは明らかです。これが外国人枠の縮小、聞いた事のない20歳以下の選手の起用ルールが生まれた理由だと考えています。

いまのところ大胆なこのルールは若い選手にとってポジティブに働いているように思います。
あくまで自分のチームの話になりますが、20歳以下の選手たちの成長が凄まじいです。どんなに若手を育てようと思っていても、実力が足りないのに緊迫したリーグ状況で起用するのは勇気がいります。そこを強制的にすることで、プレッシャーのかかる試合経験を積み、みるみる成長していっているように見えます。
恐らくですが、このルールがなければ若手選手はなかなか試合に出られなかっただろうし、この成長も得られなかっただろうと思います。

ちなみにですがナショナルリーグにはAリーグでプレーしているウェリントンフェニックスのリザーブチームが参加しています。今回の新しいリーグ構成でもウェリントンフェニックスリザーブは無条件で参加できます。彼らは全員が20歳以下で構成されていて完璧に育成目的で存在しています。J3に参戦している下部組織のチームのように、そこから有望な選手はすぐにトップチームにあげられるシステムになっています。昨年、僕が戦ったウェリントンフェニックスリザーブの中からも2人の選手がトップチームへの昇格を果たし、Aリーグでデビューもしています。

NZF-National League Branding


東京オリンピックで日本が対戦したニュージーランドのメンバーにはウェリントンフェニックスの選手が最多であり、このことからもリザーブ選手の育成は上手くいっているのではないかと思います。

所属チーム人数
WELLINGTON PHOENIX5
NEWCASTLE JETS2
FC HELSINGØR2
ALMERE CITY1
SWANSEA CITY1
WEST HAM1
SINT-TRUIDENSE V.V,1
RIO AVE1
MINNESOTA UNITED1
HAMILTON ACADEMICAL1
CENTRAL COAST MARINERS1
XANTHI FC1
VIKING FK1
FC COPENHAGEN1
BURNLEY FC1
FALKENBERGS FF1
https://www.nzfootball.co.nz/squad/all-whites-squad

育成の観点とは別に、チームの話をするとウェリントンフェニックスリザーブは毎年ナショナルリーグでは最下位になっています。現地ではこの結果から、「ウェリントンフェニックスリザーブだけずるい」などという声もありますが、個人的には仕方がないと考えています。

教育的観点から考えるニュージーランドサッカー

次に、これはサッカーに限った話ではないのですが、ニュージーランドの子どもたちは一つのスポーツを年間通してずっとやることはありません。
ニュージーランドの教育方針で、スポーツは夏と冬に分けられ、子どもたちは自分の意志でスポーツを選びます。僕のチームにいる中高校生のアカデミー選手とかから聞くと、冬にサッカー、夏にはマウンテンバイクやバレーボールなどを選ぶ人が多いみたいです。
そしてもちろん毎日活動があるなんてこともありません。
「いろんなスポーツ、ゆったり経験する」
これがニュージーランドにおけるスポーツを通じた教育方針です。
オフがないのは当たり前、何かあったら走りや坊主、サッカー以外のスポーツをする時間なんてない高校時代を過ごしてきた僕とは反対の世界です。

しかし前に記事かなにかで読んだことがあるのですが、ニュージーランドは人口当たりのオリンピックメダル獲得数がかなり多いみたいです。記憶が正しければ世界トップに近かったような。。

このことから考えるとニュージーランドの様々スポーツを経験させる方針は上手くいっていると言えます。
しかしリーグ構成が変わりナショナルリーグでプレーすることになると、年間通してサッカーをプレーすることになります。もちろん20歳以下の選手の中には高校生もいます。ナショナルリーグでプレー出来るほどの若い選手だから年間サッカーをプレーすることを厭わない人が多いと思いますが、そうじゃない人もいそうなのが正直な予想です。
そのくらいこの国の選手のサッカーに対する気持ちは強くないです。

結論

現在のニュージーランドの代表チームAll WhiteはFIFAランキング119位です。
しかし、オリンピックでは初戦で韓国を1-0で破り、史上最強と呼ばれた日本相手にもPK選までもつれ込みました。日本や世界に比べて、この国のサッカーはまだまだ発展途上にあるけれど、若い世代を中心に勢いをつけてきています。人気のスポーツもまだまだ圧倒的にラグビーとクリケットだけど、サッカーの人気も高まってきていると現地の人は口を揃えて言います。

つまりこれからもっと強くなってくるんじゃないのが僕の予想です。

プロリーグがなく、アマチュア選手だけで構成されているニュージーランドのサッカーリーグ。
国に一つだけ存在するプロチームのリザーブチーム「ウェリントンフェニックス」。
ニュージーランドのスポーツを通じた教育方針による夏冬切り替え制度。
ニュージーランド人のサッカーに対する意識の低さ。

これらの事を考慮して考えたニュージーランドサッカーの展望が以上のものです。

たとえ今年いっぱいでこの国を離れることになってもこの国のサッカーには注目していきたいと思います。

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この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

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