僕らサッカー選手にとって必需品であるスパイク。
今日はそんなサッカースパイクが環境問題にどんな影響を与えているのかについて調べてみました。
結論から言うと「複雑かつ深刻です」
問題は多いですが、この記事を読んで、僕らが使っているサッカースパイクの背景や事実を知り、その上で選択をするために参考になれればと思います。
アスリートとして競技のパフォーマンスだけでなくリテラシーもしっかりと高めていきたいと思います。
サッカースパイクが抱えている問題
タイトルにもある通りまずはサッカースパイクが抱えている問題を環境問題の面から見ていきたいと思います。
カンガルー皮革のためのカンガルー殺戮
足馴染みが良くフィット感も高いことからサッカー選手に人気なカンガルー皮革。
実はこのスパイクのために多くのカンガルーが犠牲となっています。
2 Million Kangaroos Are Slaughtered Every Year for Football Boots
https://vegconomist.com/fashion-design-and-beauty/2-million-kangaroos-are-slaughtered-every-year-for-football-boots/
(サッカースパイクのために毎年200万匹ものカンガルーが殺処分されている。)
また、僕の住むオーストラリアでは動物愛護団体を中心とした参加者によって、ナイキショップの前で「カンガルー皮革の使用を辞める」よう訴えるデモ運動も起きたみたいです。
Two US congressmen have introduced a bill to ban kangaroo products and curb the trade in kangaroo skins used by Nike, Adidas and other companies.
https://www.abc.net.au/news/2021-04-08/us-ban-commercial-shooting-kangaroo-leather-football-boots/100050994
米国の2人の下院議員が、カンガルー製品を禁止し、ナイキやアディダスなどの企業が使用するカンガルーの皮の取引を抑制する法案を提出した。
他にもカンガルー製品の禁止を定める法案(カンガルー保護案)が提出されています。
2016年にカリフォルニア州ではカンガルー製品の生産販売が禁止されましたが、この法案が成立すれば、ナイキやアディダスなど米国に拠点を置くスポーツ用品メーカーが、カンガルー革をサッカーブーツなどの製造に使用できなくなるみたいです。
一方で、カンガルーを殺さなければすべてが収まるというわけでもなさそうです。カンガルー狩猟を職にして生活をしている人もいますし、カンガルーが増えることによって発生する被害もあると思います。
そんな複雑の問題を中立の立場から良くまとめられている記事がありましたので、興味があればDeepl翻訳などを使用して見てみてください。
サッカースパイクから有害な化学物質が検出される
2014年ブラジルワールドカップに向けて製造されたサッカーグッズから、有害化学物質が検出されたことが判明しています。
調査の結果、アディダスのサッカーシューズ「プレデター」から、同社が定めた規制値の14倍ものポリフルオロ化合物(PFCs)が検出されました。
https://www.environmentalleader.com/2014/05/toxic-chemicals-in-world-cup-soccer-gear-greenpeace-says/
独立した研究所が、シューズ、ゴールキーパーグローブ、公式ボール「ブラズーカ」を含む33品目のさまざまな物質を検査した結果、3大陸で購入された3社の製品から、パーフルオロ化合物(PFC)、ノニルフェノールエトキシレート(NPEs)、フタル酸類、ジメチルホルムアミド(DMF)などの有害な化学物質が検出されました。
https://www.environmentalleader.com/2014/05/toxic-chemicals-in-world-cup-soccer-gear-greenpeace-says/
検出されたPFCは環境中に放出されると分解されない汚染物質であり、実験動物では生殖、発育、全身に影響を与える毒性が確認されているとのことです。
またアディダス製品に限らず、ナイキ製品からも有害化学物質が検出されています。
ソリューションとしてグリーンピースという国際環境NGOは、すべての有害化学物質の排出をゼロにすることを大手アパレルブランドに求める「デトックス・キャンペーン」などを展開しているようです。
サッカースパイクのごみ問題
環境問題の一つとして深刻な状況にあるゴミ問題ですが、サッカースパイクが与えている影響もかなり大きいみたいです。
Each year in America, 300 million pairs of shoes are thrown away, taking an average of 30 to 40 years for just one pair to decompose.
https://www.wichita.edu/about/wsunews/news/2021/03-march/EET_Shoe_Recycling_5.php
(アメリカでは毎年3億足の靴が捨てられており、1足が分解されるのに平均30~40年かかると言われています。)
さらにこの捨てられた靴の約95%は埋立地へと送られるみたいです。つまりほとんどがリサイクルされていないという状況だと言えます。
上記の数字はサッカースパイクに限らず靴全体の数字ですが、靴がリサイクルされにくい理由としては「素材」にあります。
サッカースパイクはプラスチックに限らず皮や糊、天然芝用だと金属も素材として使われています。処理が複雑で一概に可燃ごみとか不燃ごみと分けられるものではないようで、日本では自治体によって分かれているようです。
なのでスパイクを捨てる際は自治体の情報をチェックしてください。
ですが僕の憶測ではこの複雑さが、スパイクの不適切なごみ処理を招いていると思います。われわれはスパイクを捨てる時にわざわざ調べたりすることは稀です。可能性を捨てたくはないですがほとんどないと思っています。
その結果、めんどくさいのでテキトーに捨てて、間違ったごみ処理の原因となっていると思います。
「処理方法をしっかりと調べる以外に解決策はないのか。」
以下が一つの解決策となりそうです。
Football boot recycling scheme launched by UK startup Sokito to develop circular initiative to divert boots from landfill and create new materials.
https://www.einnews.com/pr_news/574833988/pilot-scheme-announced-to-trial-world-first-circular-model-for-football-boots
(英国のスタートアップ企業Sokitoが、ブーツを埋立地から転用し、新素材を生み出す循環型イニシアチブを開発。)
他にもナイキやアディダスといった大手スポーツメーカーからは、リサイクルで出来たスポーツシューズが開発されてきています。
使い終わったスパイクをどう処理するのかも大切ですが、そもそものスパイクがどうやって出来ているのかにこだわるのも環境への一つの貢献方法になりそうです。
またこれは僕の意見ですが、僕らの周りのサッカー選手を見渡すと「まだ使えるスパイク」が捨てられているケースが多いように思います。
こだわりが強くなればなるほど、スタッドが削れてきたから試合では履けない、足に合わないから履かないという場面を多く見かけます。例えば、練習用として活用するとか、履けなくなったスパイクは子供や他の人に譲るなどをして、スパイクの寿命を伸ばしてあげることもゴミを減らすための立派な貢献だと思いました。
感想
サッカーのスパイク一つとっても多くの問題を抱えていることを知りました。
特にカンガルー皮革については、「現在モレリア(カンガルー皮革のスパイク)を履いていること」、「近くの公園でかわいいカンガルーと遭遇していること」があり、とても複雑な気持ちになりました。
モレリアネオは個人的にはすごく履きやすくてお気に入りだし、カンガルー皮革のほうが好きなので、今後すぐにカンガルー皮革のスパイクをやめられるかは分かりません。
ましてやカンガルーの問題でもあったように企業や専門家レベルの話になってくるので、何をすれば解決という話でもないように思います。
ですが、人に見られ、影響を与えることが出来るアスリートだからこそ、自分が使っている道具の背景や事実を知ったうえで選択をするということは大切なことだと思います。
僕もいろいろ考えた上でスパイクを選んでいこうと思えるきっかけとなりました。
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