この度、ニュージーランドでサッカースクールを開設しました。なぜニュージーランドにてわざわざ自分でスクールを開くことにしたのか、ニュージーランドで現地の人を対象にしているサッカースクールについて日本語で日本の人に向けて書く意味はあるのか、いろいろと突っ込みたいところはあると思います。ですが個人的な意見で、「何かを始めるときには文章で書いておくべき」というものがあるので、ここにまとめておきたいのです。
世界的に見てもある種、閉鎖的でもあり、ユニークでもある日本の人にこそ読んでほしい内容でもあるのでぜひご一読ください。
先にフォローのほどよろしくおねがいします。
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サッカースクールを始めた理由
海外でプレーしたことで体験した文化の違い
僕は大学を卒業するまで海外でサッカーをしたことがありませんでした。そんな僕が大学卒業後、ニュージーランドにてサッカーをプレーするようになり多くの文化の違いを体験しました。乏しい英語力が原因で思うようにコミュニケーションが取れなかったことはもちろん、サッカーのプレースタイルやチームの雰囲気、サッカーにまつわるすべての文化に違いを感じました。特に試合後に相手チームとビールを飲み交わすアフターマッチという文化には驚きましたし、試合前後にかかわらずビールを飲む外国人選手にはカルチャーショックを受けました(今でも慣れません)。
数カ国でプレーしたことによる認知の変化
初めてニュージーランドにきてそのまま約2年半という期間を過ごしました。その時の僕が感じていたことは、日本とニュージーランド(当時の僕にとっては「海外」)の違いについてのみです。日本はこうだったとか、海外(ニュージーランド)ではこうだとか、表面的な方法の違いだけを汲み取り、ああだこうだ良し悪しをつけていました。特に日本の軍隊教育とも言える厳しいサッカー環境については強いHateがありましたので、当時の僕はなにかと日本のサッカー文化について否定的になっていたと思います(海外かぶれでした)。
しかしその後にオーストラリア、スペイン、日本、そしてニュージーランドに戻ってきたときには自分のサッカーに対する視え方が変わっていることに気が付きました。以前のように、日本のこのやり方は良いとか悪い、ニュージーランドのこの部分は良いとかではなくて、それぞれの国が違ったやり方をしていることに純粋に面白みを感じていました。そしてそのような違いは、国の文化的背景や言語、人種によって基づいていることが多く、宗教や文化の本を読み漁るようになったのもそれからです。
とにかく数カ国でプレーした経験から、どの国が良いとかではなく、それぞれの国の違いに純粋に興味を持ち始めるようになりました。
小さい頃から興味津々だった海外サッカー
思えば、僕は小さい頃から海外のサッカーに興味がありました。特に実際に海外でプレーしてきた選手が、「〇〇の国のサッカーは全く違う」という言葉にいつも惹かれていたように思います。同じサッカーという競技なのになぜ国によってサッカーが変わるのか、そんなことに漠然と興味を抱き続けていました。
知っておくことの価値
僕がサッカースクールでやりたいことの根幹はここにあります。教育方法、トレーニング方法、言語も違えば、コミュニケーションの方法も違う。どれが正解なのかわかりませんし、正解を探すことがサッカーという競技において意味があるようには思えませんが、多くの選択肢を知っておくことには大きな価値があると信じています。
わかりやすく言うと、現代では”教養”がすごく求められています。自分の頭で考えて行動していかないといけない現代では、より多角的な分野の知識が求められ、その中から思考して選択していくことが求められています。
僕はサッカーにおいても例外ではないように感じています。より多くの考え方に触れることによって、自分の選択肢を広げることに繋がりますし、サッカー選手としてはもちろん、一人のヒトとして人生を豊かにしてくれるのではないかと信じています。
ニュージーランドサッカーについて
ここでは僕が思うニュージーランドサッカーが抱える問題点とポテンシャルについて書いていきたいと思います。
ニュージーランドサッカーの問題点
1,クラブベースのサッカー文化
イギリスの文化が色濃く残るニュージーランドでは、サッカー文化もイギリスに近しいものがあります(熱はまったくありませんが)。日本の部活動に紐づいた環境とは違い、ニュージーランドでは子どもから大人までが一つのクラブチームでプレーをしています。個人的にはこれは素晴らしいことであると思います。
しかし強いて言うならば、いくつかの問題点があると考えます。
一つは地域によってクラブが決まってくることです。当たり前のことに思えますが電車のない(クライストチャーチ)ニュージーランドでは、これが大きな問題となってきます。また、11歳以下の子どもの単独行動が法律で禁じられているため、送迎はすべて親の仕事になります。つまり、親の事情によって通うクラブが決まり、結果的に家から近いクラブでサッカーすることが基本になります。
二つ目は指導レベル・環境についてです。職業としてサッカーコーチがほとんど成立しないニュージーランドでは指導力の高いコーチは少ないように思います。またクラブのユース年代のコーチはトップチームの現役選手が行うケースも多いです。現役選手から教われるという貴重な機会ではありますが、その選手が移籍をしたらコーチも変わってしまいます。
ニュージーランドでは、「あのコーチに教わりたいから」という理由でサッカー環境を選ぶことがとても難しい状況にあります。
2,費用の高さ
サッカーに限らずですがニュージーランドでは物価の高騰が凄まじいです。富裕層にとっては問題ないかもしれませんが、クラブで子どもをサッカーさせることが金銭的に苦しいという声を多く聞きます。単発での参加ではなく、タームごと(長期)の契約が基本となるクラブのサッカーでは、家庭によってはハードルが高いということもあるのかもしれません。
3,ローカル地方の環境
ニュージーランドのローカル地方は日本のローカルとはレベルが違います。加えて先にも述べた交通機関と送迎の事情。ローカル地方にクラブが存在しなければ、現実的にそこに住む子どもはサッカーを習う機会を得ることができません。個人的にここは需要はともかくとして大きな問題として捉えています。
ニュージーランドサッカーのポテンシャル
1,選択肢の多さ
クラブベースの良いところではありますが、クラブのサッカーや環境が合わなければ移籍するという選択肢が常に用意されえいます。これは日本の部活動文化とは違い、とても良い環境であると思います。
2,現役選手から教われる機会
ニュージーランドにはプロリーグが存在しません。国内トップリーグでプレーする選手もみんなアマチュア選手としてプレーします。これが故に殆どの選手が他にフルタイムの仕事をしながらプレーをしているし、ある選手はクラブでコーチをしながらプレーをしています。
そして僕は個人的にプレーをしながらコーチをできるというのはアマチュア選手ならでは特権であると考えています。プロ選手であればプレーをすることが仕事であるので、それに支障をきたすようなことは許されません。しかし、アマチュア選手であればそれが可能です。
僕は小さい頃、コーチや年上の先輩とサッカーをするのがとても好きでした。自分よりも技術もフィジカルも経験もある選手から、肌で感じて、学び取ることがとても楽しかったし、それが一番の上達の方法であったように思います。
「現役選手と実際にプレーをしながらサッカーを学べる」
ニュージーランドのアマチュアサッカーだからこそ可能な条件を、僕は積極的に実現していきたいと思います。
3,国際色豊かな環境
移民国家のニュージーランドでは日本とは相対的に国際色が豊かです。僕が大人になってから気がついたダイバーシティの大切さも、こちらの子どもは普段から自然と体感しています。
それに加えてニュージーランドサッカーには海外からの外国人選手が多く来ます。ほとんどが日本人で構成されているJFLや地域リーグとは違い、ニュージーランドでは多くのチームが外国人選手を招いてプレーしています。
僕はこの外国人選手に着目していて、将来的には海外のサッカーを経験してきた外国人選手にコーチをしてもらうことで自然と海外文化をサッカーを通じて体感できる環境をつくっていきたいと考えています。
4,広大なサッカースペース
ニュージーランドには広大な公園が有り余るほどにあります。しかもそれらはすべて天然芝で、公園によってはかなりきれいな芝の状態のところもあります。もちろんそれらは無料で使用することができます。
上質な天然芝が無料で使用できる。日本では考えられないほどの環境がニュージーランドにはあるのです。
Glocalが目指すこと
最後に僕がここニュージーランドでやりたいことについて軽く記しておきます。
まずは先に述べた通り、「サッカーを通じて多くの文化を体感できる環境」をつくっていきます。この他の国との”違い”を体感することにどれだけの人が価値を感じているかわかりませんし、僕自身いまだにうまく言葉にできません。しかし、この”違い”を知ることが人生を豊かにすると僕は信じているので、子どもたちにもっと早くから体感できる環境をつくっていきます。
もう少し具体的なサッカーの目標は、プロでないにしろ海外でサッカーをプレーする選手を輩出していきたいです。自分がそうだったように、サッカーをプレーすることで言語や文化、様々な違いを日常生活から経験できます。特に多言語を学習することによる思考の変化は大きく感じているので、なかなか多言語を学ぶことない英語ネイティブの人にも多言語を学びたくなるきっかけをつくっていきます。そのために、そのような挑戦を後押しする事業も展開していく予定です。
もちろんサッカー選手としても成長しなくてはなりません。どこの国に行っても活躍できる選手を育てるために必要なことは、「Group Tactics(グループ戦術)とIndiviual Tactics(個人戦術)」であると考えています。そしてヨーロッパでプレーして感じたのは、日本の子供もニュージーランドの子どもも、この戦術の理解度がとても低いように思います。どんな指導者に教わろうとも変わらない基礎の部分を僕がモデル化し、小手先ではないベースとなる技術をコーチングしていきます。
最後にやりたいことはローカル地域への出張コーチングです。子どもが親の事情でサッカーができない、親の事情で他の街まで通えない。そうであるならばこちらから出向くまでです。機会は限られますが、コーチがローカル地方に出向いてサッカーの機会を作る。ニュージーランドでは今までにない取り組みになります。
一回あたりの参加費を安く設定していることにも起因してますが、なるべく多くの子どもにサッカーの機会を作りたいというのが僕の思いです。現在は参加費を頂いてますが、ニュージーランドにはギャンブルで集まった寄付金がNPOに大量に流れる仕組みがあります。将来的には参加費を限りなく下げて、ローカル地方への出張もできれば理想的な環境だと思います。
自分に言い聞かせるためにも最後にもう一度。
僕が作りたいのはあくまでも「環境」です。多様な価値観にサッカーを通じて触れられる、そんな環境にとても価値を感じているし、必要であると考えています。なので、極論を言えば僕がコーチをしなくてもいいと考えています。サッカーを教えるということが自分に向いているのかわかりませんが、一先ずはやりたいことの手段としてサッカーコーチを頑張ってみたいと思います。
このタイミングになって、初めてニュージーランドに来る前に訪れていたフィリピンで現地に子どもたちに「おれたちのコーチになってよ!」と頼まれたあの言葉と光景がよく思い出されます。世界にはサッカーを教わりたくても教えてくれるコーチがいない子どもたちがいると知ったあの日から、そのことを忘れることはありませんでした。
外国人選手(特に英語ネイティブではない)でこのクライストチャーチでサッカーをしながら住み着こうとする選手はそう多くありません。数カ国でのサカーを経験して、日本人選手としてこの国のトップリーグでプレーしている自分だからこそできることもあるのかもしれません。そこに力を注いでいきたいのです。
うまくまとめられた気は全くしないのでまた今度追記できればと思います。
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