サッカーだけがしたくて海外にいるわけではないんです。

海外で生活をするようになってからおおよそ4年が経とうとしています。コロナという今までにとんでもない強敵を前にニュージーランドでロックダウンなどを経験し、ビザの問題で働けなくなったり、気がつけばベジタリアンになったりと奇想天外の海外生活を経験してきました。一方で、サッカーの方は自分が予想していた以上に良い軌道に乗ることができ、サッカーでお金を稼ぐことを期待していなかった僕が、オーストラリアでサッカーのみで生活をすることも経験することができました。

一年で帰る予定がコロナの影響もあって3年もかかりましたが、総括するとなかなかよくできた一度目の海外生活だったと思います。

しかし、二度目の海外挑戦は清々しいほどに敗北を喫しました。ニュージーランドとオーストラリアで自信をつけた僕は、念願であったスペインにサッカー挑戦する決断をしました。スペインのビザを取得するために4ヶ月もの日本滞在を余儀なくされました。親に頼み込み、実家にただで居候してタダ飯を毎日食べさせてもらいました。最初で最後の、しかも半シーズンのみのスペイン挑戦と決めていたので、すべての時間をサッカーとスペイン語の勉強にあてました。

しかし、結果として契約を獲得できずたったの2ヶ月でスペインサッカーは終わりを遂げました。

帰国をしてからニュージーランドに戻ってくるまで再び4ヶ月日本に滞在することになりました。ヨーロッパ旅でほぼ全財産を使い果たした僕は、最初の3ヶ月はとにかくアルバイトに明け暮れました。旅の中でいろんな人に出会い、多くの外国人と会話していくなかで、世の中には本当にたくさんの人がいることを知ることができました。お金があるとかないとか、どんな仕事をしているかしていないとか、社会的地位がどうだとか、若いとか老人だろうが、そんなことは関係なくて。とにかく幸せのカタチは人それぞれであるということをこの目で見た気がしました。そんなこともあって、日本に帰ってから僕はいろんな人を見ることを意識してアルバイトも探しました。

また、サッカーの面では母校である大学に戻りサッカーをさせてもらうことで、今の大学生と触れ合うことができました。大学生の頃からなんも変わってないなと思えるところと、ここだけは少し成長したんかなと思えるところがあり、たまにエモかったです。

すいません。前置きがかなり長くなりました。僕が日本に帰国して沢山の人と話しましたが、「海外にいきたい」と思っている人が意外にもたくさんいることがわかりました。悩んでいる理由は人それぞれだし、経済能力が皆無の僕が言っても何も説得力はないのですが、「行きたいなら行っちゃえばいいじゃん」と、そう思ってましたし実際にそうやって伝えてきました。

僕がひとつだけ思ったのが、ほとんどの人が0or 100 で海外生活というものを考えているような気がしました。いわゆるAll or nothing です。ですが、ぼくにとってこれは少し良くない気がしています。そして実際に僕も、「サッカーがしたくて海外にいる人」と思われてる部分が少なからずあると思います。しかし、それは違います。

今まであまり語ってきませんでしたが、僕がサッカーと海外生活をどう捉えてるのか。人生の不安を減らすために、どう戦略として考えているのか。そんなことを書いていきたいと思います(自分のためにも)。

就活の時期にある大学生と話して、当時の僕の不安がそこには全部ありました。すこしでも彼らの参考になれば、僕の海外生活も報われた気持ちになれます。海外に行きたいけど悩んでる。そんな人や、友達に悩んでいる人がいればぜひ読んでもらえると嬉しいです。

元収容施設にて数泊してました。

サッカーを利用するという考え方

サッカーがしたくて海外にいるのか
海外でサッカーがしたくて海外にいるのか
海外にいるためにサッカーをしているのか
日本で就職をしたくなくて海外にいるのか
外国語を話せるようになるために海外にいるのか

このどれもが間違っているわけでもなくて、そして合っているわけでもありません。

なぜ海外にいるのか?
なぜ海外でサッカーをしているのか?

無理にでも一文で表すならば、僕はこう答えます。

「海外の文化に興味があって海外生活を経験してみたい、そのためにサッカーというツールを利用している。」

こんな感覚に近いです。

何が影響しているのか僕にも分かりませんが、学生時代の頃から僕は「海外」というものにとても興味がありました。
言語が違うとか、見た目が違うとか、街並みがきれいとか。そういったことよりも、「外国人」が僕ら日本人と全く異なった思考回路というか価値観を抱いているような、そんな印象を受けました。そしてそれがとても不思議であり、僕の海外への興味の源泉になったんだと思います。

サッカーに関して言えば、小学生高学年の頃くらいからヨーロッパのサッカーに熱中していたような気がしています。ロナウジーニョやメッシというスーパースターや、熱狂的なサポーターがいる雰囲気に惹かれていました。

歳を重ねるに連れて、自分の周りにも海外サッカーを経験したことある人が増えてきました。僕はプロ選手を含めた彼らの話を聞くのがとても好きでした。

「海外のサッカーは全然ちがうぞ」

僕の感覚からすると、日本にも相当たくさんのサッカーがあると思います。
でもそれら全部を含めた集合体を、一つの”サッカー”として僕らは認識しています。しかし、海外に行くことでそれが違ったものになる。日本の北海道と沖縄では同じサッカーと言えるのに、海を超えた途端に違うサッカーになる。
僕にはこれが不思議で仕方ありませんでした。

何がそうさせているのか。サッカーに違いを生む根源はなににあるのか。

日本でサッカーをしながらも僕はずっとこんなところに興味を抱き続けていました。そしてそれが大学を卒業したときに、ある種の爆発を起こして今の海外生活に至ります。

猫。

サッカーで生きていきたい、だから海外にいる。

これに関しては僕ははっきりとNOと答えることができます。

高校生ぐらいから周りとのレベルの違いを見せつけられて、僕はプロサッカー選手になるという夢を持つことができなくなっていました。そしてそれは大学を卒業するまで変わることはありませんでした。しかし、日本でプロになれなくても、海外でプロサッカー選手になるという選択肢もあります。現に、日本でのプロ経験がない選手が、海外でプロ契約を勝ち取りプロサッカー選手として生活をしているケースがいくつもあります。
僕は彼らにはリスペクトしかありません。

なぜなら僕にはそれができなかったからです。

サッカー選手として生きていきたいという気持ちよりも、とにかく海外で生活をしてみたいという気持ちが大きいのが正直なところです。先にも述べましたが、外国人の思考回路や生活様式に興味があります。そしてその中で自分が生きていけるのか、どう感じるのかというところが経験しておきたいポイントです。

そのために英語も必死に勉強しました。”グローバル社会で必要な人材になるために”とか”英語ができると給料が上がるから”とか、そんな理由ではなく、ただ外国人と話して仲良くなって彼らをもっと知りたいという理由だけで英語を勉強しました。いまもまだまだ続けています。

そのくらい海外の文化に興味があります。
極論を言ってしまえば、海外で生きていくためならサッカーをやめてもいいと思っています。

もうサッカーで上は目指さないのか。

こんな事を言っていると、サッカー選手として上を目指すことはもう諦めて、中途半端にやっていると思われるかもしれません。

しかし、それにははっきりとNOと言わせてください。

海外文化を経験したい気持ちとは別軸に、まだまだサッカーうまくなりたいという気持ちが溢れています。
サッカーのパフォーマンスをアップさせるために、体や栄養に関する知識は増えてきていますし、自分の体を使っていろんなことを試しています。少しでもレベルの高い環境でプレーして、その中で活躍をして、身の回りの人に喜んでもらえるように。そのための労力を全く惜しいと思わないのが27歳になる僕です。とにかくサッカーが好きだし、サッカーでまだまだ上を目指したい。そんな気持ちが僕にはまだまだあります。

しかし、「自分のすべてを捧げてもプロになりたい」そう思える熱量が今の僕にはないだけです。プロを目指さないことと、上手くなりたいことは矛盾しないと僕は考えています。

外国語を話せるようになるために海外にいる。

英語を話せるようになるためには、英語圏の国で生活をするのが一番てっとり早い。きっとこれは真であると思います。
海外にいれば自然と話せるようになるというような甘いものでは全くありませんが、外国語がほとんど飛び交うことのない日本で外国語を習得することはかなり難易度が高いことだと思います。(不可能だとは言いません)。

ですが、語学のために海外で生活をするということはあまり好ましい判断ではないように思います。なぜならそのためのコストがとんでもなく高いからです。そして、外国語を話せることが大事なのではなくて、外国語を使ってその文化や人を知ることがとても大切だと僕は思うからです。

僕も海外に行くときに、多くの留学会社に目を通しました。しかし、そのどれも僕には手が出ないほど高額なものばかりでした。海外を数年経験した身として、ここまで高額な費用をかけても一年じゃ大して語学は伸び切らないぞと思うのが正直なところです。

僕が留学という言葉や語学学校という言葉をどこかで毛嫌いしているのには、ここらへんに理由があるのかもしれません。とにかく「語学」を目的にするのであれば、それだけのために海外で生活をするのはコスパが悪いというのが僕の意見です。

この街一番のマーケット。

サッカーのおかげで生きやすくなっている

ここにきてやっと本題に入れた気がします。
僕は海外にも興味があるし、海外の生活様式も経験したい。その国の文化や食事、人にも興味があります。そのために外国語は話せるようになりたいし、少なくとも英語とスペイン語くらいは話せるようになりたいと考えています。そして僕はサッカーが好きで、まだまだ現役選手として上手くなりたいし、レベルの高い環境でサッカーしたいと考えています。「海外のサッカーは違うぞ」この言葉の真意を知るために、自ら海外でプレーして追求していきたいと考えています。

これらすべての欲望を叶えるために、僕はサッカーを利用して海外で生活をしています。
サッカーを利用するというのはあまり言葉が良くないのですが、サッカーのおかげで海外で生活をしやすくなっていることは間違いないと考えています。

例えば、僕は3年くらい前にワーキングホリデービザの期限が切れてニュージーランドで働けなくなってしまった時期が半年ありました。しかし、当時のクラブが家賃などをサポートしてくれたおかげでなんとか生き耐えることができました。

コロナの中、沢山の人に支えられながらもなんとかニュージーランドでサッカーを続けたことによって、オーストラリアにサッカーで移籍することができました。その際の飛行機代や家賃などのほとんどはクラブが負担してくれることになり、僕の出費はほとんどありませんでした。

スペインに行くときはワーキングホリデービザを自分で用意して行きました。しかし、参加したチームが特殊だったこともあり、滞在した二ヶ月間の宿代と食事はすべて支給され、給料こそないものの出費もない状況で生活することができました。サッカー以外に時間を持て余しており、相当な時間をスペイン語の勉強に費やし、そして現地ですぐに実践できるという環境にいることができました。(スペイン人との二人部屋生活は人生で最大級にストレスフルであったことも記しておきます)。

また今回ニュージーランドに戻ってくるときには、クラブからビザを申請してもらうことができました。僕のようななんのスキルを持たない人はワークビザを取得することは難しく、本来であれば戻ることも叶わない状況でした。しかし、サッカーのおかげでビザを取得できただけでなく、ビザの申請費用やフライト代などもクラブが負担してくれています。

4年前にすべて自腹でニュージーランドに乗り込んだときとはかなり状況が変化したものだと実感しました。それもすべて僕はサッカーのおかげだと考えています。サッカーのおかげでコロナの中でもニュージーランドで生き抜くことができたし、その3年間で英語力も相当伸びました。

通常30万ほどかかるヨーロッパサッカー留学も、ほとんど出費することなしにスペイン滞在を実現させました。スペイン語もまだまだ何も話せませんが、2ヶ月だけの滞在の割には意外と聞き取れるようになったと自分でもびっくりしています。

そしてなにより、海外の文化や人に興味のある僕にとって、サッカーというスポーツはこれ以上ないかもしれない絶好のコミュニケーションツールとなっています。僕が知りたかった海外のサッカー文化を知れることはもちろん、サッカーを通じてサポーターやチームメイトと本当に貴重な関係を築けていると思います。

海外で生きていくためにサッカーに生かされている。なんて幸せなことか。

つまるところ、サッカーのおかげで僕は海外でも生活できているのかもしれません。ですが特筆しておきたいのは、僕はプロサッカー選手でもなんでもないただのサッカー選手であることです。プロ選手であれば上記のような金銭的な援助は当たり前で、生活できるようなお金をサッカーで稼いでいくことになります。しかし、僕にはそれができません。

ただ、そんななんてことないサッカー選手でも、サッカーのおかげで念願であった海外生活を実現できています。
うまい言葉が見つかりませんが、サッカーのおかげで海外でも生きやすくなっていると心から実感しています。

何が言いたいかというと、日本で突き抜けられなかったものでも海外に行ったときに意外と役に立ったりするものもあるみたいです。
僕にとってそれはサッカーでした。

失敗したとしても糧になるはず

そして、海外に行くためになにか立派な理由を一つ掲げる必要はないように僕は思います。というより、一つの目的で収まらないほどに海外にも魅力がたくさんあります。自分が言うのもなんですが、僕のようにたくさんのことに興味があって、そのどれもを追求していくのもありだと個人的には考えています。

何も誇れるような生き方はしていませんが、悩んでいる学生の方、海外に行きたいと迷っている方。僕は行ってしまったほうが良いと思います。あれもやりたいし、これもやりたい。それでいいと思うし、ダメだったときに戻れる国が日本という国であることは正直言って最強です。

日本を出ると失うこともたくさんあります。友達との飲み会は行けないし、家族にも会うことが出来ません。金銭的に余裕がなかったりすると、かなりしんどい思いもすることがあるのが海外生活です。ただ、「外を知る」ということの貴重さを最近実感している僕です。もし海外に行きたいけど悩んでいる、という方の背中を少しでも押せたら幸いです。

こんなことを書いている今日も、新しい家が見つかるまでの間、チームメイトの家に泊まらせてもらうことになりました。人の温かさをダイレクトに感じやすいのも海外生活の良いところかもしれません。また、新たな文化を感じながら、僕もなにか日本人として価値を提供できるように、そんな生き方をしていきたいと思います。

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この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

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