プロを目指すわけでもないのになぜスペインに来たのか。

去年の9月に僕は26歳になりました。気がつけば20代も後半に突入しています。大学を卒業してから就職をせずに海外に飛び出す決断をしてから4年目に突入しているみたいです。サッカーを始めてから何年になるのかはもはや分かりませんが、間違いなく20年以上の年月をサッカーに注いでいます。プロサッカー選手になることを夢見ていた少年時代から、成長の過程で挫折も味わい、高校生の頃にはあんなに夢見ていたプロサッカー選手を自然と諦めている自分がいました。なにがきっかけというわけでもなく、気がつけば夢を見ることさえもできなくなっていたと考えるととても儚いです。とはいえ、サッカーが好きという気持ちは変わらずに大学に進学してからも授業そっちのけで部活動にのめり込み、そしてそれはなんと大学を卒業をしてからも続けることになりました。しかも海外へと場所を変えて。

スペインの街並みお届けします。

3年前にニュージーランドに向かった時と、今でも変わらない気持ちがあります。それは「プロサッカー選手」を目指していないということです。目指していないとも言えるし、目指せないとも言えます。「どこからがプロサッカー選手なのか」という問いは、ここではサッカーで生計を立てていること、そしてプロリーグでプロ契約をしていることを指したいと思います。

なぜプロを目指さないのかと言われれば、現実を目の当たりにしたと言うのが正しいと思います。僕が少年時代に夢を見ていたプロサッカー選手というのは、ワールドカップで活躍をしたり、Jリーグの、もちろんJ1でめちゃくちゃに活躍するような選手でした。しかし、蓋を開けてみるとプロサッカーの世界は甘くはありませんでした。周りの高校や大学で「コイツはやばい」と思っていた選手もプロの世界ではほとんど名前を聞かなかったり、戦力外通告を受ける選手もいます。先日のワールドカップの日本代表に僕と同い年で選出されたのは2人のみでした。同年代に何万人といるサッカー選手がいて、これまでに幾人ものスーパーな選手を見てきましたが、たった2人です。僕が夢を見ていたのはその2人でした。

本気でサッカーをしてきたからこそ、その2人の凄さが分かるし、自分とのとてつもない差を知っています。22歳の時点で、僕にはその彼らになるためだけの険しい道を登る情熱はすでにありませんでした。

街全体の統一感がすごい好き。

なのになぜ26歳にもなってまだ海外でサッカーを続け、そしてスペインに来たのでしょうか。正直言って、そこに立派な理由はありません。ただ一つ言うなれば、「これをせずして死ぬのは嫌だった。」僕にとってそう思えるのがスペインでした。

人生には「これだけはやっておきたいこと」みたいなものが、人それぞれあると思います。僕にも色々あるのですが、大学を卒業してサッカー人生の引退を目の前にした時に、「海外のサッカーを知らずして辞めるのは嫌だ。」という強い感情が湧き出ました。僕は心の底から湧き出たその感情に素直に従い、就職をせずに海外に出ることを決意しました。

Europeっぽい

なんでスペインなのかという理由はあまり触れないでおきます。スペイン語が話せるようになりたいとか、スペインの街並みに憧れがあったりとか、ずっとバルサファンだったことなど理由はたくさんあります。しかし、それらに今後の人生のためにつながるような立派な目的や狙いは正直いってありません。スペイン語を使ってなにか仕事をしたいとか、スペインでサッカーを学んでコーチを目指すとか、今の僕にそういった明確なプランはありません。

それでも僕はスペインのサッカーを体感してみたかった。

本当に理由はそれだけです。

マーケットでのスパイス屋さん。

しかし、人生設計が大切だということは理解している一方で、その時の感情に任せて今を一所懸命に生きるということもすごく大切だと僕は考えています。

プロでもないのに海外でサッカーをやっていて、ふと心にグサッと来る質問があります。それは「How old are you?」です。アマチュアのサッカー選手はサッカーだけで生計を立てるのは難しいので、サッカーの他に職を持っています。特にプロリーグのないニュージーランドではサッカーと仕事を両立するのが当たり前の世界で、現地に住んでいる選手はフルタイムで仕事をしながらサッカーをしています。プロとしてサッカーで生活できない虚しさはありますが、逆を言えば日本で言われるアスリートの第二キャリア問題は解決されていることになります。ワーキングホリデービザなどを駆使して滞在している僕には、サッカーを辞めても続けられる仕事に就くことは難しく、現に僕はアルバイトとしてカフェで働いていました。

そんな僕を心配してなのか、チームメイトはよく聞いてきました。「なにがしたいんだ?」と。「何をして働きたいのか?」と。その質問に僕はずっと答えることが出来ませんでした。僕がニュージーランドに行った理由も、海外でサッカーを続けている理由も立派なものは何一つありません。サッカーが好きだし、「世界」というものを知らずして今後の人生を生きたくなかった。ただそれだけです。

マーケットの様子。

だけど今の僕はそれでいいと思っています。この答えにたどり着くまでに悩みに悩みましたが、先のことは深く考えずにいきていこうと思います。今を精一杯に生きることで見えてくるものがある。僕はそれを信じることにしました。

現に僕はアスリートとしてパフォーマンスを追求する過程で、ベジタリアンというものに着目しました。そうすると自分が環境問題に関心があったことに気が付き、少しだけ将来のやりたい仕事の方向性が見えてきています。きっとこんな感じに、スペインのサッカーを本気で楽しむことによって、「違和感」のようなものを感じ取れるようになると思います。きっとそれがその次にやりたいことになると思います。

試合観戦。

最後に、僕はプロになれなかった今までの自分に後悔のような気持ちはありません。そしてプロでないにも関わらず、サッカーを中心にギリギリの生活だろうと今を生きれていることに少しだけ誇りがあります。僕はプロにはなれませんでした。しかし、プロでなくてもそこそこのプレーができるだけで、海外で生活していきやすくなります。現に、ニュージーランドでは仕事が出来ない時期もありましたがチームメイトがサポートしてくれ生き延びることが出来ましたし、オーストラリアではニュージーランドで築いたキャリアをもとにサッカーだけで生活することも出来ました。そして、今スペインでも生活費は殆どかからずにサッカーすることが出来ています。

なにが言いたいかというと、僕はサッカーを利用させてもらっている感覚に今は近いと感じています。サッカーが好きだし、海外でプレーをしたいという気持ちもありますが、それよりも海外の生活や文化に強い興味があることに気づいています。日本に住み続けていては知ることのなかった世界を見ることができて、今は本当に楽しいです。そんな貴重な経験をサッカーを通じて得ることができて幸せものだと心底思います。

サグラダ・ファミリアは見るべきだと思った。

そして何よりサッカーの良いところは、人を繋げてくれるところ。海外で生活していろんな文化の違いを体感しようが、結局は人との関わりが一番思い出に残っています。その人間関係を構築するためにサッカーというツールはもってこいだと思います。

正直言うと、この記事を書いている現在は正式にクラブとも契約していないし、welcomeされていない気がしていて疎外感も感じています(自分が人見知りであることが原因なのはわかっている)。しかし、サッカーで試合に出て1ゴール取れば状況が変わることを僕は知っています。それがサッカーの素晴らしいところでもあります。思えばニュージーランドでなんの宛もなく現地のサッカーチームに乗り込んだときも同じ空気感がありました。「あいつ誰だよ」と。しかし僕はサッカーを通じて彼らとたくさんの思い出を残すことが出来ました。それがスペインでもできることを僕は信じています。信じているというより、そうした人間関係をサッカーを通じて構築することが今回の僕のスペインサッカーでの目標です。

長くなりましたが、僕はプロでなかろうと真剣にサッカーと向き合うし、今後の仕事とか不安もありますがスペインでの生活を全力で楽しみたいと思います。それがきっと今後の人生でも特別な何かになるかもしれないし、それができる今という時間をとても幸せに感じているので。これが僕がプロを目指すわけでもないのにサッカーで生きている意義です。

やっぱビーチにこれ必要だよね。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

コメント

コメントする

目次
閉じる