「戦力外通告。」

1月24日。練習参加をしていたスペイン5部相当のクラブと契約が出来ないことが明らかになりました。
朝、目を覚ますと一番に目に入ってきたエージェントからの連絡。まだ目がぼやけていたにもかかわらず、良い知らせではないことは直感的に察しがつきました。そしてそこには、いわゆるセカンドチームでプレーしてほしいという内容が書いてありました。
いわゆる、戦力外通告というものです。

朝一とは思えないとてつもなく大きな溜め息と、頭が真っ白になるようなショックが襲ってきました。
スペインに来てから約10日間、僕はこのチームでチャンスを掴み取るだけにすべてを捧げてきました。オフや試合日もあったので、数えるとわずか7回の練習でなんとかアピールをしようと必死でした。感覚的には、8月からオフシーズンであったブランクもあり正直最初の数回の練習はひどいパフォーマンスでした。パススピードも日本で体を動かしていた大学のチームとは桁違いに早かったし、パスの判断もとても早かったのが衝撃でした。
しかし、パフォーマンスとは裏腹に、「これがおれが求めていたものだ」と言わんばかりのパス回しにモチベーションは高まる一方でした。

そして、サッカーとは不思議なものでテクニックやフィジカルは簡単には成長しないのですが、頭の方は割と早く順応します。チームがやりたいサッカーのイメージや、選手の特徴が少しずつ分かってくるとともに、僕のパフォーマンスもアップしていきました。
先日、このチームの2試合目を観戦したときには、「絶対にやれる」というたしかな自信さえ感じていたほどです。

正直なところ、コーチからの評価は高くないだろうということは分かっていました。ヘッドコーチはスペイン人で英語を話せないからコミュニケーションを取ることが出来ず、残りの二人のコーチは英語は話せたものの、挨拶もされないような状況で名前も全く覚えられていませんでした。明らかになめられていたし、見下されていました。

それでも自信があったのには訳があります。実はニュージーランドに3年前に乗り込んだときも同じような体験をしたからです。当たり前ですが、知り合いもゼロでチームに入れてほしいと言ってきた日本人をニュージーランドのクラブの人達もあまり歓迎はしてくれませんでした。当時は英語もろくに話せなかったのでなおさらです。意味もわかってないのに笑いものにされていることだけは感じ取ることが出来ていました。
実力的には負けていない自信があっても、クラブにゆかりのある選手が優先されて使われていました。最初の数カ月はベンチからのスタートが多かったです。
悔しかったですが必ずプレーで結果を出すことを考え続け、後にレギュラーを獲得することが出来ました。

僕のような特徴の無いプレイヤーが信頼を勝ち取るのは難しいし時間のかかることです。それが海外になるとより一層難しくなるのですが、「試合になれば結果を出す」そのことだけを考えていましたし、その自信もありました。
だから契約さえ勝ち取れれば…
そう考えていました。

ところが、コーチ陣からは要らないと判断されました。
「彼はここのレベルから大きく外れている」
僕なりの日本語訳ですが、コーチの一人が僕のエージェントに送ったそのメッセージを見た時にすべてが散りました。

選手として評価されなかった悔しさ。
選手として短期間で結果を残せなかった悔しさ。
やれる自信があっただけに、そのメッセージを見たときには憎しみのような感情を抱いたことも事実です。

しかし、これは誰が悪いわけでもなく、すべて自分の責任です。
サッカー選手である以上、結果で可能性を示せなかった事実を受け入れなければなりません。

さて、気持ちの整理も全くついていない中、セカンドチームの練習がさっそく今日ありました。正直、悔しい気持ちが溢れかえっていました。
しかし、そもそもを考えると僕は「何部であっても構わないからとにかくスペインでサッカーをしてみたい」そう意気込んでスペインへの準備をしてきました。ポジティブに考えれば6部であろうとスペインでサッカーできる環境に感謝すべきです。
冷静に考えると家や食事を提供してもらっている死ぬほどありがたい環境であることに変わりはないので、無理やり気持ちを切り替えて練習に臨みました。

正直、トップチームと比べるとレベルはかなり落ちたというのが感想です。
パススピードもフィジカルもテクニックもすべてが格段とレベルダウンしました。あえて悪く言うならば、わざわざスペインに来てやるレベルなのか?と思うほどです。
サッカー選手としては少しでもレベルの高い環境で、そこで試合に出て活躍することが一番成長できると考えています。残念ながら、その環境とは程遠いかもしれない。というのが初めて練習に参加した感想です。

さて、そんな状況に立たされた今。僕はそれでもスペインに来た意味を見出すことが出来るのでしょうか。
僕は出来ると信じています。それが僕がプロだけを目指していない理由でもあるし、世界のサッカーを体感したいと思った根源的な理由であるからです。その先に何をしたいというのは、今も全く見えていません。
スペインのサッカーを体感したからと言って、サッカー関連のキャリアを歩むかは分かりません。全く関係のない仕事を来年にはしている可能性だってあります。それでも僕は「スペインを体感したい」この一心できました。
スペイン語を話せるようになって何をしたいわけでもなく、一日中必死にスペイン語を勉強しています。

きっと合理的に考えたら今の判断は間違えています。それでもその気持ちを抑えられずにはるばるとやってきました。そうしたからには何かを掴むしかないのです。
たとえ望んでいたものとは違っても、僕はこのセカンドチームの契約を本気で取りに行きます。それが何かにつながると信じているからです。

人間とは欲深い生き物で、手に入れられるはずであったものを逃すとなかなか切り替える事ができません。僕は典型的なその生き物みたいで、未だに悔しさが全く晴れません。

「He is a long way off the level.(彼はここのレベルから大きく外れている)」

当分忘れることもできなそうなこの屈辱的なメッセージを胸に、
悔しいですが、苦しいですが、それでも足掻いていきたいと思います。

がんばります。

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この記事を書いた人

Vegetarian x Athlete.
Football player in Australia(NPL South Australia).
Interested in Environment issues.

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