先日、「The game changers」(ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実)を観ました。
アスリートと菜食主義について言及されているドキュメンタリーで、新たな発見も多くとても面白かったです。
しかし、かなり一方的な主張が強かったドキュメンタリーにも思えました。
「アスリートには菜食主義がベストだ」
「菜食主義アスリートこそが最強だ」
視聴した人がこのような感想を持ってしまうような主張が多かったのですが、それは少し違うように思います。
私が思うに、
「菜食主義でもアスリートとしてやっていける」
このように捉えることが今は正しいと思います。
現在、ヴィーガンとアスリートに関する本を読んでいることもあり、私がこのドキュメンタリー映画を観た時は、「ん?それはどうなんだ?」と思わざるを得ない主張も多々ありました。
そこで、今回は「ゲームチェンジャー」を観て思った「注意すべき主張」について紹介していきます。
・ロジック的にそうは言いきれないんじゃないか?
・説得力に欠けるけど、主張で押し切っているように見える
こんな点を中心にまとめていきます。
科学的なデータを矢継ぎ早に提示に説得力を見せているようでしたが、すべてを鵜呑みにするのは危険です。
しっかりと客観的に判断できるように、この記事で勉強していきましょう。
内容
UFCで戦った総合格闘家が時代の最先端を走る科学者やトップアスリートに話を聞き、食生活が運動能力や健康に及ぼす影響を探求する。
Netflix より
このドキュメンタリーのナレーターも務める、元総合格闘家ジェームス・ウィルクスが、自身の怪我や菜食アスリートへのインタビューや実験から、菜食主義アスリートについて探求していくストーリーです。
気を付けるべき主張5選
ディアスVSマクレガー
ドキュメンタリー内で、菜食主義者のネイト・ディアスと肉を愛するコナー・マクレガーの2人の総合格闘家が取り上げられていました。
ドキュメンタリー内での主張はこうです。
菜食主義のディアスと肉食主義のマクレガーの対決はディアスが勝利します。
マクレガーがスタミナ切れを認めたインタビューと共に「菜食主義の方がスタミナで勝る」と主張しているように思えました。
しかし注意すべきは以下の点です。
・ディアスがマクレガーに勝ったのは2ラウンド4分12秒
・半年後、マクレガーは5ラウンドフルに戦い判定勝ちにてディアスを倒している
つまり、二戦目はより長い戦いをマクレガー勝利しているのです。
ところが、ドキュメンタリー内ではこのマクレガーが勝った二戦目については触れられていませんでした。
※この二戦目は2016年8月で、このドキュメンタリーは2018年の作品です。
もしマクレガーが一戦目の敗戦後、菜食に切り替えスタミナが向上したことで勝てたという証言や情報があれば、まだ主張は納得できるのですが、その情報は確認することはできませんでした。
Point
・「ディアスがマクレガーに勝ったのは、菜食主義のおかげでスタミナで上回ったからだ」と受け止めるべきではない。
脂肪の働きについて
ドキュメンタリー内では、アメフト選手を対象に菜食と肉食の後の血漿の透明度を調べるシーンがあります。
透明な血漿であれば血管の内皮機能がうまく働き、パフォーマンスを発揮できる
反対に濁っていれば、パフォーマンスは低下します。
結果は菜食のあとは血漿が透き通っており、肉食のあとは濁っていました。
したがって主張としては
「肉を食べると、脂肪によって血漿が濁りパフォーマンスが落ちる」
といっているように思えました。
私が思うにこの主張は半分正解で、半分間違いです。
たしかに試合当日や前日には脂肪分が多い食べ物は避けるべきというのは、アスリートにとっては常識的に知られていることです。
しかし、脂肪はまったく必要のないと受け止めるのは間違いです。
私が読んでる本「THE PLANT BASED ATHLETE」にも脂肪はアスリートにとって大切な栄養素であることが書かれています。
したがってこのドキュメンタリーで、もしも、
・脂肪という栄養素の働き
・菜食からのみでも必要な脂肪は確保できる
ことが述べられていれば、ロジックとして成立するように思いました。
Point
「肉を食べると、脂肪によってパフォーマンスが落ちる」と受け止めるのは少し危うい。
性機能の向上
ドキュメンタリー内で大学生を対象に、菜食の方が勃起等の性機能が高まるという主張がされていました。
ここで気を付けなければならないのは、
まだ科学的に実証されているわけではない
ということです。
これはドキュメンタリー内でもしっかり語られていますが、インパクトが強い結果が故に見落としかねないと思いました。
Point
「菜食主義の方が性機能が高まる」という科学的な実証はまだない。
菜食の野生動物>肉食の野生動物ではない
ドキュメンタリー内では、サイやゾウ、ゴリラといった強い草食の野生動物を引き合いに
「菜食野生動物は強い」と主張されているように思いました。
私が思うに正しい受け取り方は
「菜食の野生動物の中にも、強い動物はいる」です。
菜食の野生動物が強力だと述べる一方、ライオンやチーターなどの肉食動物にはまったく言及されていませんでした。
菜食の方が強いというのであれば、
・ライオンなど肉食動物についての言及
・それぞれの動物の生息環境
などにも述べられていないと、このロジックは成立しないと思いました。
Point
「菜食の野生動物の方が強い」というわけではない。
菜食主義アスリート>肉食アスリートではない
最後はアスリートについてです。
ドキュメンタリー内ではたくさんのアスリート、それこそオリンピックメダリストに菜食主義のアスリートがいることが紹介されていました。
他にも
「菜食だとプロテインが足りなくなって、強さに欠けるんじゃないか」
という疑問点を払拭するために、力持ち世界記録保持者や多くのパワー系アスリートが紹介されていました。
それぞれの選手のインタビューから
「菜食のほうが優れている」という主張をしているように思えましたが、これもそう思い込むのはまだ早いです。
まずオリンピックメダリストに多くの菜食主義者がいることを挙げていましたが、肉食のメダリストもたくさんいることも事実です。
しかし、このドキュメンタリーではそのことにまったく触れられていないため、一方方向の主張の強さを感じざるを得ませんでした。
たしかにドキュメンタリー内でストロングマンの世界記録保持者が菜食主義者であることは説得力があります。
しかしそれだけでは
「アスリートは肉食より菜食主義の方が良い・強い」と受け止めるのは、危ういです。
私が思うに「菜食でも強くなることは出来る」というのが正しい主張の受け止め方です。
Point
「アスリートは菜食の方が強く、パフォーマンスも高い」と受け止めるべきではない。
まとめ
・「ディアスがマクレガーに勝ったのは、菜食主義のおかげでスタミナで上回ったからだ」と受け止めるべきではない。
・「肉を食べると、脂肪によってパフォーマンスが落ちる」と受け止めるのは少し危うい。
・「菜食主義の方が性機能が高まる」という科学的な実証はまだない。
・「菜食の野生動物の方が強い」というわけではない。
・「アスリートは菜食の方が強く、パフォーマンスも高い」と受け止めるべきではない。
結論として、この映画の主張の正しい受け止め方は
「菜食主義でもアスリートとしてやっていける」
このくらいがちょうどいいと思います。
菜食になれば最強になるわけでもないし、菜食こそがアスリートにとっての絶対的な正解とはまだ言えないのです。
圧倒的なフィジカルで前人未踏の記録を量産し、徹底した食事管理で有名なクリスティアーノ・ロナウドも鶏肉を食べます。
大切なことは、正しい知識を勉強し、自分に合った食事方法を探求していくことなんでしょう。
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